医療費が高額になった際の患者負担を軽減する「高額療養費制度」。この制度の見直しを巡り、政府は患者団体などの強い反発を受け、本年8月に予定されていた自己負担上限額の引き上げを見送る決定を下しました。その後、「秋までに見直しの方向性をまとめる」と公言していましたが、8月末を迎えてもなお、具体的な進展は見られません。一体、この重要な社会保障制度の行方はどうなっているのでしょうか。
高額療養費制度の見直しを議論する議員連盟の会合風景
「秋までに決定」は果たされたか?沈黙の裏側
高額療養費制度という言葉は、今や多くの人々にとって馴染み深いものとなっているでしょう。昨年冬までは、がん患者や重傷者、あるいは自己免疫疾患の関節リウマチなどの難病患者で、この制度を利用して治療を続けることが不可欠な人々を除けば、一般にはさほど知られた用語ではありませんでした。しかし、政府・厚生労働省による自己負担上限額の見直し案が報じられるようになった本年1月以降、さまざまなメディアでこの名称を目にする機会が劇的に増えました。
「そういえば今年初めの国会で大きな騒ぎになり、新聞やテレビでも大きく取り上げられていたな」と、この言葉に覚えのある人も少なくないはずです。現代は「二人に一人ががんに罹患する時代」とも言われており、たとえ今自分には直接関係のない社会保障制度であっても、いつか利用する時が来るかもしれないと、この問題を身近に感じた人も少なくなかったことでしょう。実際に、1月から3月にかけてはワイドショー番組で何度も取り上げられ、世論調査の質問項目になるほど大きな注目を集めた「バズワード」状態でした。
しかし、最近ではこの言葉を新聞、テレビ、オンラインニュースなどで見聞きする機会はほとんどなくなりました。メディアの俎上から姿を消しただけに、「半年ほど前にあれだけ世の関心を集めたこの問題はすでに解決した」と認識している人も少なからずいるのではないでしょうか。だが、実際にはまだ何も決着していません。世間からの大きな反発と、国会での野党議員のみならず与党側からの批判に晒された高額療養費制度の見直し案は、現在、当初案が白紙に戻され、「凍結」されているに過ぎないのです。
そもそも、この制度に手を入れようとした政府と厚生労働省が、見直し自体を諦めたわけではないことは、3月7日の凍結発表時に政府関係者が「本年秋までに改めて方針を検討し、決定することといたします」と述べていることからも明らかです。その後も、厚生労働省社会保障審議会医療保険部会などの会議でこの制度が話題になるたびに、厚労省側の担当者は上記の言葉を踏襲する形で「秋までに新たな方針を決定する」という旨の発言を繰り返しています。ここで注意すべきは、政府側が繰り返し述べている「秋までに」という部分です。要するに、正念場は8月を過ぎたこれからの時期であり、この医療費負担を巡る問題は、今まさに重要な局面を迎えていると言えるでしょう。
結論:見直し議論は継続中、国民の監視が不可欠
高額療養費制度の見直しを巡る議論は、メディアの注目が薄れたとはいえ、決して終わったわけではありません。自己負担上限額の引き上げ案は一時的に「凍結」されたものの、政府と厚生労働省は「秋まで」という期限を設け、新たな方針を検討し続ける姿勢を示しています。この問題は、がんや難病を抱える人々だけでなく、全ての国民にとって将来の医療費負担に直結する重要な課題です。今後、どのような形で議論が進展し、どのような新たな見直し案が提示されるのか、国民一人ひとりが引き続き関心を持ち、その行方を注視していくことが不可欠です。
参考文献: