石丸伸二氏、代表退任へ:安芸高田市に残した「SNS政治」の功罪とは

地域政党「再生の道」の石丸伸二前広島県安芸高田市長が2024年8月27日、記者会見で9月16日付での代表退任を発表した。2024年の東京都知事選で165万票を獲得し、一躍全国にその名を知らしめた石丸氏。安芸高田市長時代にはSNSを駆使した独自の政治手法で注目を集めたが、議会との激しい対立の末に議員とその妻が相次いで亡くなるという出来事も発生している。任期途中で市長を辞職した石丸氏が、人口2万6000人の小さな街に残したものは何だったのか。ノンフィクション作家の神山典士氏による現地レポートの冒頭から、その実像に迫る。

石丸伸二氏、東京都知事選での躍進と「再生の道」の挑戦

2024年の東京都知事選挙では、無名に近い新人でありながら、石丸伸二氏が小池百合子氏に次ぐ約165万票を獲得し、蓮舫氏を大きく引き離して2位となった。この結果により、石丸氏の知名度は一気に全国区へと広がる。

石丸伸二氏が「再生の道」代表として東京都議選で演説する様子。多くの聴衆が東京・千代田区で耳を傾けている。石丸伸二氏が「再生の道」代表として東京都議選で演説する様子。多くの聴衆が東京・千代田区で耳を傾けている。

現在、東京都議会選挙では、石丸氏が立ち上げた地域政党「再生の道」が42人の候補者を擁立している。同党の候補者公募には全国から1128人が応募し、3次選考の最終面接はYouTubeで公開された。50本の動画は合計で585万8000回再生され、平均再生数は11万7000回に達した。石丸氏はこれを「政治を扱ってこれだけ再生数が出ることはかつてなかった快挙」と自負している。

物議を醸した安芸高田市長時代の「SNS政治」

石丸氏の政治活動は、2020年8月から2024年6月まで務めた広島県安芸高田市長時代に始まった。そのスタイルは現在と同様、YouTubeやTwitter(現X)を徹底的に活用する「SNS政治」である。

石丸氏は市議会の様子をYouTubeに公開し、特定の議員を「悪役」として批判する一方、自らは「ヒーロー」を演じる手法を取った。すると視聴者たちがその動画からセンセーショナルな場面を切り抜き、次々と投稿することで動画が拡散していった。安芸高田市公式YouTubeチャンネルは最盛期には登録者数26万7000人を突破。人口わずか2万6000人足らずの小さな自治体が、東京都や神戸市といった大都市を抜き去り、全国1位の登録者数を誇るチャンネルとしてインターネット上で大きな話題をさらった(2025年6月現在の登録者数は18万4000人)。数字だけを見れば、2004年に6つの町が合併して誕生した安芸高田市で、若手政治家が市政刷新を成し遂げたかのように映る。しかし、その裏では議会との激しい対立や、居眠りを糾弾された議員とその妻が相次いで亡くなるという悲劇的な出来事も発生していた。

政治家の真価を問う「残されたもの」

本来、政治家の評価は、「その人が去った後に何を残したか」によって決まるものである。佐藤栄作は沖縄返還という歴史的な事実を残し、田中角栄は全国を網羅する新幹線網と高速道路網を整備した。中曽根康弘は国鉄民営化によってJR7社を誕生させ、小泉純一郎は拉致被害者の3家族帰国という成果を実現させた。

数字上の注目度やSNSでの影響力は一時的なものかもしれないが、安芸高田市において石丸氏が本当に残したものは何だったのだろうか。そして、今後の政治活動において「SNS政治」はどのような永続的な価値を生み出すのか。彼の退任は、その答えを問う契機となるだろう。

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