米控訴裁、トランプ氏の主要関税を「違法」と判断も最高裁上訴まで維持承認

米首都ワシントンに所在する連邦巡回区控訴裁判所は29日、トランプ前大統領が発動した関税の大部分について違法であるとの判決を下しました。しかし、政権が連邦最高裁判所へ上訴する機会を確保するため、今年10月14日まではこれらの関税を維持することを認める判断も示しています。この判決は、トランプ政権の貿易政策、特に国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく関税措置に大きな法的疑問を投げかけるものです。

控訴裁の判決内容とトランプ氏の反発

この決定を受け、トランプ前大統領は自身が運営する交流サイトに投稿し、「極めて党派的」な裁判所の判断を強く批判しました。彼は投稿の中で「関税がなくなれば国にとって完全な災害となる」と主張し、国内経済と産業保護における関税の重要性を強調しました。さらに、「最高裁の助けを借りて」関税が引き続き国家に利益をもたらすことを期待していると述べ、今後の最高裁での争点となる可能性を示唆しています。この発言は、今回の判決が単なる法的判断に留まらず、米国の政治的、経済的な議論に深く関わる問題であることを浮き彫りにしています。

相互関税の発表を行うトランプ前大統領。背景に米国の国旗。ワシントンのホワイトハウスにて。相互関税の発表を行うトランプ前大統領。背景に米国の国旗。ワシントンのホワイトハウスにて。

判決の対象と法的根拠の検証

控訴裁が今回取り上げたのは、トランプ前大統領が4月に発動した「相互関税」と、2月に中国、カナダ、メキシコに対して課した一連の関税の合法性でした。裁判所は、大統領が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づきこれらの広範な関税を課す権限はないと判断しました。しかし、鉄鋼やアルミニウムに対する関税など、他の法的権限に基づいてすでに発動されている貿易措置には、今回の判決は影響を及ぼしません。この点は、トランプ政権が今後も他の法令を根拠に関税政策を継続する可能性を残しています。

判事の投票傾向と専門家の見解

今回の判決は7対4という僅差で下されました。詳細を見ると、民主党政権下で任命された判事8人のうち6人が賛成し、2人が反対。一方、共和党政権下で任命された判事3人のうち1人が賛成、2人が反対という結果でした。この投票の内訳は、この問題が単なる法的解釈に留まらず、政治的背景も含む複雑な性質を持っていることを示唆しています。商務省の元高官で、現在は戦略国際問題研究所(CSIS)の上級研究員であるウィリアム・ラインシュ氏は、トランプ政権がこの判決を予期しており、すでに代替案を準備している可能性が高いと指摘。「他の法令によって関税を維持するだろう」との見解を示しており、政権の次の一手に注目が集まります。

市場の反応とこれまでの経緯

今回の判決に対し、時間外取引における株式市場はほとんど反応を示しませんでした。ライリー・ウェルスのチーフ・マーケット・ストラテジストであるアート・ホーガン氏は、「市場も米企業も、通商をめぐってこれ以上の不確実性を求めることはない」とコメントしており、既に複雑な状況にある国際貿易環境において、新たな混乱を避けたいという市場心理を反映しています。これに先立ち、連邦控訴裁は米国の中小企業5社と、民主党の地盤が固い12州による提訴についても判決を下していました。また、ニューヨークの国際貿易裁判所は5月下旬、同様に大統領の権限を逸脱しているとして一連の関税の大部分を差し止め、憲法が他国との通商を規制する独占的な権限を議会に与えていると判断していました。トランプ政権はこれらの判決に対しても直ちに控訴しており、今回の控訴裁の判断が最高裁に持ち込まれる可能性は極めて高いと見られます。

結び

今回の連邦巡回区控訴裁判所の判決は、トランプ前大統領の貿易政策における法的正当性に疑問符を投げかける重要な節目となりました。関税の維持が一時的に認められたとはいえ、最高裁での最終判断が下されるまで、貿易政策の不確実性は続くでしょう。この決定は、米国の国内政治だけでなく、日米関係を含む世界の貿易関係にも長期的な影響を及ぼす可能性があります。今後の最高裁の動向、そしてトランプ政権(あるいは次期政権)の貿易戦略が、国際社会にどのような影響を与えるか、引き続き注視が必要です。

参照

  • Reuters