韓国で「冷房使用拒否」社員が波紋、宗教的理由で職場の快適性が二分

職場の冷房問題、宗教の自由と多数の快適性の間で揺れる韓国企業

【ソウル】韓国のオンライン掲示板「ネイトパン」に今月中旬、職場での冷房使用を巡る異例のトラブルが投稿され、大きな議論を呼んでいます。蒸し暑い海辺に位置する社員約30人の中小企業で、一人の新入社員が「宗教的理由」からエアコンの使用を拒否。これにより、他の社員が猛暑に耐える状況が生じており、韓国社会における職場の課題として注目されています。

新入社員の信仰と冷房拒否の背景

投稿者によると、この企業では通常、室温25度でエアコンを常時稼働させていました。しかし、昨年秋に入社した新入社員が、自身の信仰に基づき冷房の使用を拒否。その教義では、「冷風は身体を害し、魂の流れを遮断する」とされており、本人は真夏でも扇風機やその他の冷房機器を一切使わず、自宅ではうちわで暑さをしのいでいるといいます。

職場でも同様の姿勢を崩さず、「申し訳ないが少し我慢してほしい」と周囲に懇願し、時には「信仰のため」と主張してエアコンのスイッチを切ってしまう事態が発生しています。この行動に対し、他の従業員からは息苦しさや不満の声が上がっていました。

宗教的自由の主張と会社の妥協案

新入社員はさらに、会社の冷房使用が自身の「宗教的自由を侵害している」として、会社側に陳情書を提出しました。この事態を受け、社長は「各自がデスク用の小型扇風機を使用し、エアコンは必要最低限にする」という妥協案を提示。しかし、この解決策は根本的な解決にはならず、他の社員たちは「宗教に関わる問題なので誰も公に意見を言えない」と、その扱いに困惑している様子です。

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ネット上の反応と社会への示唆

この投稿は韓国のネット上で瞬く間に拡散し、「一人の宗教的理由で多数が犠牲になるのはおかしい」「席替えで対応すべきだ」といった批判的な意見が殺到しました。中には、「労働当局に通報すべきだ」と具体的なアドバイスをする声も上がっています。

今回の事例は、個人の宗教的自由と、職場の快適性や多数の社員の労働環境という普遍的な権利が衝突した際の、現代社会における難しいバランスを浮き彫りにしています。多様な価値観が共存する職場で、どのようにして適切な配慮と公平性を保つか、韓国のみならず世界中の企業が直面する可能性のある課題と言えるでしょう。

参考資料