レトロゲーム市場が熱狂!高騰する中古ゲーム、訪日外国人観光客が牽引する新たなトレンド

「Nintendo Switch 2が発売されたから、昔のゲーム機が安くなっているかも!」――そう期待してリサイクルショップを訪れた筆者(30代男性)が目の当たりにしたのは、予想とは真逆の現実だった。2017年発売のNintendo Switchは定価から大きく値下がりしておらず、2006年発売のPlayStation 3でさえ2万円以上。さらに驚くべきことに、2004年発売のニンテンドーDS、2001年発売のゲームキューブ、1990年発売のスーパーファミコンといった数十年前のゲーム機までもが、想像以上の高値で売られていたのだ。この現象は、単なる懐かしさでは片付けられない、日本の社会経済における新たな市場の動きを示唆している。

1985年発売のレトロゲーム機「ファミコン」本体が現在も高値で取引される様子1985年発売のレトロゲーム機「ファミコン」本体が現在も高値で取引される様子

世界を驚かせたレトロゲームの落札価格:数億円規模の取引も

近年、中古ゲームは「レトロゲーム」という新たなジャンルを確立し、市場全体がプレミア化の一途を辿っている。数十年前の古いゲームにもかかわらず、世界中で多くのコレクターや愛好家が買い求め、その取引価格は時に驚くべき水準に達する。特に海外ではその傾向が顕著であり、以下の高額落札事例がその勢いを物語っている。

  • 2021年には、NES(海外版ファミコン)用「ゼルダの伝説」(1987年発売)がオークションサイト「eBay」で87万ドル(約9600万円)で落札された。
  • 同年にNINTENDO 64用「スーパーマリオ64」(1996年発売)がオークションハウス「Heritage Auctions」に出品され、156万ドル(約1億7200万円)という価格がついた。
  • さらに、NES用「スーパーマリオブラザーズ」(1985年発売)はコレクターサイト「Rally」で200万ドル(約2億2000万円)という破格の値段で落札されている。

これらの事例は極端なものと捉えられがちだが、レトロゲーム全体の価格が底上げされているという事実は否定できない。デジタルゲームが主流の現代において、物理的なゲームソフトや本体が持つ稀少価値が再評価され、投機対象としても注目されているのだ。

秋葉原の現場から見るインバウンド需要の隆盛

都内の中古ゲームショップ、特にレトロゲームの聖地ともいえる秋葉原では、この市場の活況を肌で感じることができる。秋葉原の「レトロげーむキャンプ」店長である田中祐博さんは、近年の変化について次のように語る。「コロナ禍が明けて以降、外国人のお客様が劇的に増えました。以前もインバウンドという言葉はありましたが、今の賑わいはそれ以上です。今では外国人と日本人の比率が7対3ほどになっています。」

筆者が平日の昼間に取材に訪れた際も、店内は多数の外国人客で賑わっており、国際色豊かな活気が満ち溢れていた。同店で最も売れているのは、1989年発売の携帯型ゲーム機「ゲームボーイ」のソフトだという。当時のメーカー希望小売価格が8000円だった本体も、現在ではケースのない状態でも2万円前後で取引されており、カラー版よりも初代のモノクロ版の方が数千円高いというから驚きだ。田中店長は、「ゲームボーイアドバンス(2001年発売)を買えばゲームボーイのソフトも遊べるのに」とこぼすが、30年以上前の携帯型ゲーム機が高値で取引される現実は、レトロゲーム市場の特殊性を物語っている。

「ポケットモンスター」シリーズが牽引する人気とリージョンフリーの利点

ゲームボーイのソフトであれば全てが高騰しているわけではない。麻雀やスポーツ系のタイトルは比較的値がつきにくい傾向にある。また、日本人に根強い人気を誇る『ドラゴンクエストI・II』(1999年発売)のようなタイトルでも、外国人客にはあまり売れないという。しかし、こうしたソフトも少しでも値段を下げると、外国人客によって瞬く間にまとめ買いされてしまう現状がある。

特に外国人客からの人気が圧倒的なのは、「ポケットモンスター」シリーズだ。通常、日本製ソフトは「リージョンロック」の影響で海外のハードウェアではプレイできない場合が多い。しかし、ゲームボーイはリージョンに依存しない設計であるため、日本版のソフトでも海外の本体で問題なく遊べるという利点がある。この「リージョンフリー」という特性が、ハードウェアだけでなく「ポケットモンスター」シリーズをはじめとする特定のソフトの値上がりを加速させる大きな要因となっている。

結論:レトロゲームは文化財、インバウンドが価値を再定義

かつては「古い」と見なされがちだったゲーム機やソフトが、「レトロゲーム」として世界的な注目を集め、驚くほどの高値で取引される現象は、単なる懐かしさや投機熱では片付けられない。特に訪日外国人観光客による強い需要が、この市場の高騰を牽引していることは明らかだ。ゲームボーイの「リージョンフリー」特性が示すように、特定の技術的側面もその価値を後押ししている。レトロゲームは、単なる娯楽品を超え、日本のポップカルチャーを象徴する「文化財」として、世界のコレクターや愛好家によってその価値が再定義されつつあると言えるだろう。


参考文献