南海トラフ巨大地震の脅威:2038年予測と最大29.8万人死者想定、連動型地震のリスク

東日本大震災では、「災害関連死」を含め約2万2000人もの尊い命が犠牲となりました。しかし、日本列島にはさらに甚大な被害が想定される南海トラフ巨大地震という未曾有の脅威が差し迫っています。京都大学名誉教授である鎌田浩毅氏の指摘によると、この巨大地震が発生した場合、最大で死者29万8000人、そして災害関連死が5万2000人に上ると予測されており、その規模は東日本大震災をはるかに超えるものとなるでしょう。さらに最近の研究では、従来の三連動地震のシナリオが、四連動地震へと拡大する可能性も浮上しており、そのリスクは増大の一途を辿っています。この差し迫った脅威を理解し、適切な対策を講じることが、私たち一人ひとりに求められています。

東日本大震災の陸前高田市で津波後の捜索活動を行う人々。災害関連死の増加を防ぐ重要性を示す。東日本大震災の陸前高田市で津波後の捜索活動を行う人々。災害関連死の増加を防ぐ重要性を示す。

「首都圏から九州」を揺るがす広域連動型地震の脅威

南海トラフで発生する巨大地震は、大きく「東海地震」「東南海地震」「南海地震」の3つのエリアに分けられます。政府の地震調査委員会は、これら個々の地震について、今後30年以内に大地震が発生する確率を公表しており、M8.0の東海地震で88%、M8.1の東南海地震で70%、M8.4の南海地震で60%という高い数字が示されています。これらの予測確率は毎年更新され、わずかながら上昇傾向にあります。そして現在では、M9クラスの巨大地震が30年以内に発生する確率は80%に達しているとされています。

特に注目すべきは、これら東海・東南海・南海の3つの地震が同時に発生する「連動型地震」のシナリオです。この場合、震源域は極めて広範囲に及び、首都圏から遠く九州地方にまで甚大な被害をもたらすと想定されています。この広範囲で連動型地震が発生することは、もはや「確実」であると言われており、日本の太平洋沿岸地域全体が未曾有の危機に直面することになります。このような状況において、国も国民も、ただちに大規模な被害対策に着手しなければならない時を迎えています。事前準備の有無が、被害の規模と復旧の速度を大きく左右するため、早急な行動が不可欠です。

統計データが示す「2030年代」の発生予測:次の南海地震は2038年か

南海トラフ巨大地震の発生時期を予測するため、過去の活動期の地震発生パターンを統計学的に分析し、近年の地震活動データに当てはめる研究が進められています。複数のデータから導き出された次の発生時期は、西暦2030年代と予測されています。これは前回の南海地震からの休止期間を考慮しても、科学的に妥当な時期であると考えられています。

具体的には、前回の南海地震は1946年に発生しており、その前の1854年の地震から92年後の出来事でした。南海地震の繰り返し間隔は、単純平均で約110年とされていますが、92年という期間は平均よりやや短いものの、十分な周期として認識されています。したがって、地震活動の統計モデルに基づくと、次に発生する南海地震は2038年頃が有力な時期であると予測されています。地震学者の見解では、いかなる遅れがあったとしても、2050年までには次の巨大地震が確実に日本列島を襲うとされています。この予測は、私たちに具体的な時間軸を示し、防災への取り組みを加速させる喫緊の課題を突きつけています。

まとめ

南海トラフ巨大地震は、その発生が「確実」視され、2030年代、特に2038年頃に発生する可能性が高いと予測されています。この連動型地震は、首都圏から九州に及ぶ広範な地域に壊滅的な被害をもたらし、最大で29.8万人もの死者、5.2万人の災害関連死を出す恐れがあります。私たちは、この差し迫った脅威に対し、個人レベルでの備蓄や避難計画の策定はもちろんのこと、地域社会、そして国全体として、より一層強固な防災体制の構築が急務であるという認識を共有しなければなりません。今すぐにでも、来るべき巨大災害への備えを具体的に進めることが、未来の被害を最小限に抑える唯一の道です。

参考資料

  • 鎌田浩毅『災害列島の正体 地学で解き明かす日本列島の起源』扶桑社新書
  • Yahoo!ニュース (PRESIDENT Onlineからの転載記事)「最大で死者29万8000人、南海トラフ巨大地震は「2038年頃」に起きる可能性が高い…最近の研究で「連動型が四連動型になるかもしれない」という説が出てきた」