ネパール首相、中国「抗日戦勝」パレード出席へ:日ネパール関係に波紋

ネパールのK.P.シャルマ・オリ首相が、中国政府が2025年9月3日に北京で実施する「抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利80周年」記念軍事パレードに参加する予定であり、これにより主要な開発援助国である日本の心証を害するのではないかとの懸念から、ネパール国内で大きな波紋が広がっています。

中国軍事パレード参加が招く波紋と国内の声

オリ首相のパレード参加計画に対し、地元政治アナリストのチャンドラ・デブ・バッタ氏は、「長きにわたる開発パートナーである日本を傷つける必要はない」と述べ、反対の意を表明しています。同氏は、ネパール首脳の参加を中国が望む背景には、「変化する地政学的状況の中、(新興・途上国の)『グローバルサウス』が自国側についていることを示そうとしている」との分析を示し、中国の戦略的意図を指摘しました。この動きは、ネパールが外交上のデリケートなバランスを取る上で、国際社会からの注目を集めています。

オリー首相の「親中派」路線と外交慣例

ネパールは、中国とロシアが主導する上海協力機構(SCO)の対話パートナー国であり、オリ首相は8月31日に中国・天津で開幕するSCO首脳会議にも出席する予定です。昨年7月に就任したオリ首相は「親中派」と目されており、就任後初の外遊先には、これまでの慣例を破りインドよりも先に中国を訪れるなど、その外交姿勢が際立っています。このような行動は、ネパールが二つの大国であるインドと中国の間で、より中国寄りの政策を採る可能性を示唆しています。

ネパールのK.P.シャルマ・オリ首相。中国の軍事パレード出席を巡り、日ネパール関係への影響が注目されている。ネパールのK.P.シャルマ・オリ首相。中国の軍事パレード出席を巡り、日ネパール関係への影響が注目されている。

日本への配慮と要請の背景

ネパール政府筋によると、SCOの会議や軍事パレードには当初、同国のラム・チャンドラ・ポーデル大統領が招待されていましたが、日本への配慮から参加を辞退したとされています。また、日本政府から今回、パレードに要人が参加しないよう要請があったとも報じられています。ポーデル大統領は2020年に日・ネパール関係強化に寄与した功績により旭日大綬章を受章しており、「親日派」として知られています。在ネパール日本大使館の担当者は、参加自粛を要請したかについて「今は答えられない」とコメントしており、この問題の機微さが伺えます。

結論

ネパールのオリ首相による中国軍事パレード出席の決定は、ネパール国内における外交方針の議論を巻き起こし、長年の開発パートナーである日本との関係に潜在的な影響を与える可能性があります。この出来事は、南アジアにおける地政学的なパワーバランスの変化と、「グローバルサウス」諸国が主要国間の外交戦略の中で果たす役割の複雑さを浮き彫りにしています。ネパールの外交的選択は、今後も国際社会の注目を集め続けるでしょう。

参考文献