サンパウロ「パパ活パーティー」潜入調査:多様化する現代の男女関係の深層

ブラジルの主要メディアG1の取材班が、サンパウロ市で開催された「パパ活パーティー」に潜入し、その実態を詳細に報じた。これは単なる華やかな社交の場にとどまらず、経済的背景を伴う現代の男女関係の多様性と複雑さを如実に示す社会現象として、注目に値する。本記事では、このイベントの様子と参加者たちの生の声、そしてその裏に潜む現代社会の現実を探る。

華やかなパーティーの舞台裏:高級志向の出会い

今回のパパ活パーティーは、サンパウロ市南部の高級地区ヴィア・オリンピアにあるイベントスペースで、8月28日(木)の夜から29日(金)の未明にかけて開催された。会場には生演奏が響き渡り、キャビアをあしらった高級前菜やシャンパンが豊富に用意されるなど、贅を尽くした空間が演出されていた。裕福な男性たちが若く美しい女性たちに囲まれる光景は、まさに映画の一場面のようであった。

このイベントを主催したのは、経済的支援を求めるシュガーベイビーと経済力のあるシュガーダディの出会いを提供するパパ活専用マッチングアプリ「メウ・パトロシニオ(Meu Patrocínio)」。約40人のシュガーダディと、その3倍にあたる約120人のシュガーベイビーが参加し、会場の至る所で2~3人の女性が1人の男性の関心を惹きつけようと交流する様子が見られた。

高級イベントスペースで交流するパパ活女性たち高級イベントスペースで交流するパパ活女性たち

入場料は男女で大きく異なり、女性向けの最も安価なチケットは440レアル(約1万2千円)だったが、多くの女性は無料招待されていた。一方、男性向けは2千〜3千レアル(約5万4千円〜8万1千円)と高額に設定されており、さらに10枚限定で1万1千レアル(約29万7千円)のVIPチケットも用意された。VIPチケット購入者には女性3人に渡せるリストバンドが配られ、同伴した女性とともに2階のVIPエリアへ進み、より高級な飲料が提供される特典があった。

参加者の年齢層も幅広く、女性の平均年齢は27歳だが、中には50歳以上の女性も数名見受けられた。男性は30歳から70歳代までと多様で、平均はおよそ40歳だった。

シュガーベイビーたちの告白:金銭的動機と心の繋がり

イベント中、G1の取材班は複数のシュガーベイビーに話を聞くことができた。彼女たちの背景や動機は多岐にわたる。

母親の影響と経済的自立の追求:カルラ・アルーダさん

25歳のカルラ・アルーダさんは、18歳の時にこの世界に足を踏み入れた。その理由を彼女は「経済力の乏しさを嘆いていた母親の影響」と語った。「母はいつも『貧しい男と一緒になったら苦労する』って言っていたんです。だから私は、どうしたら成功した男性と出会えるのかネット検索してみた結果、このアプリに出会いました」と明かした。彼女が関係を持ったシュガーダディとの経験は、プライベートジェットでの移動、専属運転手、警備付きの生活など、まるで夢のような日々だったという。「彼からは毎月2万5千レアル(約67万5千円)の手当をもらっていました。もう普通の男性には戻れません」と率直な思いを述べた。

喪失からの再出発:モナリザ・コレアさんの新たな関係性

36歳のモナリザ・コレアさんは、父親を亡くし、14年間続いた結婚生活に終止符を打ったことを機に、この世界に身を投じた。彼女は金銭的支援以上に、友情や精神的な支えを得られたことを強調する。「最初は正直、恐怖もありました。でも、思いやりがあり、対等な関係を築いてくれる男性らと出会えたことに心から感謝しています」と、新たな出会いへの満足感を表現した。

価値観の追求:インフルエンサー、グラシアーニ・カブレラさんの主張

インフルエンサーとして活動するグラシアーニ・カブレラさんは、「お金のためじゃない、価値の問題よ」と強調した。「私は働いているし、会計士の資格もあります。困っているわけじゃない。でも自分を高められる相手と恋愛したいんです。たとえば、ある分野でめちゃくちゃ成功している男性。私も同じく高みを目指しているから」と、自身の価値観に基づいた関係を求めていることを語った。

母親の応援を背に:レチシア・プルンさんの決断

年齢非公表のレチシア・プルンさんは、母親とともにミナス・ジェライス州からこのイベントのためにサンパウロ市入りした。直前まで参加を迷っていた彼女を動かしたのは、母親の全面的な応援だったという。「母が『もうドレスも借りたでしょ? 行きなさい。綺麗にして素敵な男性に出会ってきなさい』って背中を押してくれたんです」と振り返った。

シュガーダディの視点:甘やかす喜びと隠された本音

一方、シュガーダディとして参加していた55歳の男性は、「僕の資産は多くない、200万レアル(約5400万円)ほどかな。贅沢はしないけど、ベイビーには月に1万〜1万2千レアル(約27万円〜32万4千円)を使っているね。彼女を甘やかすことが僕の1番の楽しみさ」と淡々と語り、経済的支援を通じて得られる満足感を垣間見せた。

会場の熱狂と裏側:社交の場からナイトクラブへ

会場内では、VIPエリア入室目当てに、リストバンドを所持する男性に女性たちが群がる様子や、飲み放題を楽しんでハイテンションになった女性が酔い潰れ、警備員やスタッフに介助される場面も確認された。

女性用トイレでは、シュガーベイビーたちが活発な意見交換を行っていた。「若い男は自尊心が高くて構ってくれないからダメ。経済的に余裕のある年配男性を狙うべきよ」といった実践的な助言が飛び交っていたのが印象的だ。トイレ内にはデオドラントや口臭ケア用品、縫製キットや吸収用品、香水スプレーなど、長時間にわたる”戦い”を乗り切るための備品が充実していた。

夜が深まるにつれ、音楽は生演奏からDJによるファンクへと変わり、パーティーはさながらナイトクラブの様相を呈した。参加者は自由に交流を深め、男性1人を女性2〜3人が取り囲む光景が頻繁に見られた。明確な行動ルールはなく、熱を帯びたキスが複数回目撃されたという。プライバシー保護の観点から、22時以降は携帯電話の使用が禁止されていたことも、このパーティーの特異性を物語っている。

結論

サンパウロで繰り広げられた「パパ活パーティー」は、現代社会における男女関係の新たな一面を浮き彫りにした。金銭的支援を求める女性たちと、それを与えることで満足感を得る男性たち。その動機は経済的なものにとどまらず、精神的な支え、自己実現、あるいは単なる楽しみといった多岐にわたる価値観によって成り立っている。この現象は、個人の欲望や社会の変化が織りなす複雑な人間模様を映し出し、従来の男女関係の定義では捉えきれない現代の現実を示唆している。

参考資料

  • G1 (2025年8月30日). 「サンパウロ「パパ活パーティー」潜入調査」. Yahoo!ニュースより引用.
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