東京湾に堂々と停泊する英国の最新鋭空母「プリンス・オブ・ウェールズ」は、2019年に就役したばかりの期待の新鋭艦です。今年4月に英国を出港して以来、スエズ運河や広大なインド洋を越え、約5ヶ月に及ぶ長大な航海を経て日本に到着しました。この過酷な長旅の中で、乗組員たちはどのような生活を送ってきたのでしょうか。今回、一部メディアに公開された艦内の様子を通じて、そこで働く士官たちの「住み心地」や本音に迫ります。
東京湾に停泊中の最新鋭英空母「プリンス・オブ・ウェールズ」の広大な飛行甲板
「ワードルーム」に垣間見る英国流の日常
艦内見学で最初に案内されたのは、士官専用の交流スペースである「ワードルーム(士官室)」でした。ここにはスタイリッシュなバーカウンターが設けられ、冷蔵庫にはアイルランドの代表的なスタウトビール、ギネスビールがずらりと並べられています。日中は開いているこの部屋ですが、冷蔵庫は施錠されており、士官たちは午前10時頃に集まり、紅茶とビスケットを楽しむという、いかにも英国らしい習慣が紹介されました。
ある士官は、士官以外の乗組員が集う別のバーがあることも明かし、「バーの存在は業務効率にも貢献します。1600人もの乗組員がいて部署も多岐にわたるため、飲んでコミュニケーションを取ることで、仕事が円滑に進む場面も少なくありません」と強調しました。この「飲みニケーション」の文化は、日本の昭和時代のサラリーマン社会にも通じるものがあり、乗組員間の絆を深める重要な役割を果たしているようです。
娯楽と健康管理:艦内の充実した設備
艦内にはバーの他にも、メインの食堂とは別にカジュアルなカフェが設けられており、気分転換や軽食に利用されています。また、長期にわたる航海中に乗組員が運動不足にならないよう、設備の整ったジムや、天候に左右されずに楽しめるスクリーンゴルフの設備も完備されています。実際にトイレを借りた際には、「太りすぎや飲み過ぎに注意」と記されたユニークな注意書きが貼られており、乗組員の健康管理に対する細やかな配慮が伺えました。
現代の課題:通信環境と家族との距離
しかし、快適な生活環境が整備されている一方で、不便な点も存在します。別の乗組員に尋ねたところ、最も深刻な問題は船内のWi-Fi電波の弱さだといいます。個人の船室でスマートフォンを使用することは可能ですが、映像通話は難しく、故郷の家族と連絡を取る際は、テキストメッセージを送るのが精一杯とのこと。現代社会において不可欠なデジタルコミュニケーションが制限されることは、長期間の任務にあたる乗組員にとって、精神的な負担となることが想像されます。
「助け合い」の精神:遠洋派遣の意義
最後に、とある若い乗組員に対し、「英国から太平洋は非常に遠く、自国の安全保障とは直接関係がないと感じることはないか」という少し意地悪な質問が投げかけられました。彼の答えは明確で、深い洞察に満ちていました。「確かに遠い場所です。しかし、太平洋で(米豪軍や海上自衛隊などと)合同訓練を重ねる中で実感しました。ここで私たちが互いに助け合えば、何か有事の際には私たちも助けてもらえる。ただで恩恵を受けることはできませんからね」と語り、国際的な協力体制の重要性と、相互扶助の精神が遠洋派遣の根本にあることを示しました。
「プリンス・オブ・ウェールズ」の東京湾寄港は、単なる軍事交流に留まらず、遠く離れた国々の間にある「助け合い」の精神と、その実践を担う個々の乗組員の人間ドラマを垣間見せる貴重な機会となりました。彼らの献身と国際連携への理解が、世界情勢の安定に不可欠であることを改めて認識させられます。
参考文献:
- 毎日新聞 (2025年8月28日). 「英空母の『艦内生活』を聞いてみた 東京湾に寄港中の『プリンス・オブ・ウェールズ』乗組員のホンネ」. Yahoo!ニュース.
https://news.yahoo.co.jp/articles/543a764bb2a120b4b909e67d9543d830ff6b9618