最新の各社世論調査で石破政権の支持率が軒並み上昇し、窮地に陥っていた石破茂首相(68)にとってはまさに追い風が吹いている。しかし、その一方で、自民党のナンバー2である森山裕幹事長(80)との間には、政権運営に暗雲を投げかける「すきま風」が吹き始めているという。石破首相が森山幹事長を慰留できない背景には、彼の政治姿勢と個性がある。
「去る者は追わず」石破首相の政治スタイルと求心力の低下
森山幹事長が周囲に漏らす本音からは、石破首相の慰留に対する消極的な姿勢が伺える。自民党関係者は「石破首相が森山氏を引き留めるのは難しいだろう」と指摘する。その理由として、2020年の総裁選に強行出馬して敗北し、「水月会」会長を辞任した際の経緯が挙げられる。当時、グループは集団指導体制に移行し、石破氏の求心力は著しく低下。伊藤達也元金融相(64)や山本有二元農水相(73)といった側近が次々と離れていったが、石破首相は誰一人として引き留めようとはしなかったという。これは「去る者は追わず」という彼の政治信条の表れであると同時に、悪く言えば「人に頭を下げられない人間」という一面を示している。
石破首相は、付属高校からエスカレーター式で慶應義塾大学に進んだ生粋の「お坊ちゃん」育ちだ。2世議員としての背景もあり、真の苦労を知らないとされ、自らも「人に頭を下げるのは苦手」と公言してはばからない。このような石破氏の足りない部分を補ってきたのが、叩き上げで政界の裏表を知り尽くした森山氏だった。森山幹事長は、石破政権にとって何としても手放せない「政権運営の生命線」なのである。
石破茂首相の姿。支持率上昇中の政権運営の課題が表面化。
総裁選前倒し巡る「齟齬」:二人の関係に生じた亀裂
石破首相が森山幹事長を真剣に慰留しないという状況が影響し、今や二人の間には明らかな「すきま風」が吹き始めている。政治ジャーナリストの青山和弘氏は、石破首相と森山氏の考えには「齟齬(そご)」が生じていると指摘する。
その具体例として、8月8日の両院議員総会での出来事が挙げられる。この総会では、自民党総裁選の前倒しに関する議題に絞られ、選挙管理委員会でその可否が判断されることになった。森山氏は、党内融和を優先させるため、この総会の開催を主導した。しかし、他方の石破首相は、総会開催そのものに後ろ向きな姿勢を示していたという。総裁選前倒しの議論が進む現状に対し、首相は不満を抱いているとされる。この一件は、両者の間の溝が深まっていることを明確に示している。
結論
支持率上昇という追い風を受けながらも、石破政権は要である森山幹事長との間に生じた「すきま風」という内部課題に直面している。首相の「去る者は追わず」という政治スタイルと、政権運営の生命線である幹事長との意見の「齟齬」は、今後の政権運営に大きな影響を与える可能性がある。この亀裂が修復されなければ、石破政権の安定性や進むべき方向性にも不透明感が漂うことになるだろう。