「パンツを見せろ」「触られるのが当たり前」――日本の政治の世界は、長年にわたり超男性社会として存在してきました。その中で、30年以上にわたり女性議員として戦い続けてきた野田聖子氏と辻元清美氏が、彼女たちが直面してきた理不尽な現実について語り合いました。セクハラ(セクシャル・ハラスメント)や票ハラ(票ハラスメント)、さらには育児との両立問題など、女性であるがゆえに突きつけられる数々の困難。本稿では、政治の現場に今なお深く根付くハラスメントの実態について、両氏の生の声をお届けします。
議員の道を阻むセクハラの実態:言葉なき時代の苦闘
地方議会議員を目指す女性が、途中で立候補を取りやめるケースは少なくありません。その大きな理由の一つに、残念ながらセクハラが挙げられます。辻元氏によれば、男性中心の会合でのセクハラまがいの行為や、ストーカーのように自宅まで追いかけられるといった経験から、「やはりできません」と断念する候補者がいるとのことです。
野田氏は、自身が若かりし頃の過酷な経験を語ります。セクハラという言葉がまだ存在しない時代、26歳で岐阜県議会議員だった頃から、衆議院議員に当選する32歳までの間、日常的にセクハラの対象となっていたといいます。「夜、会合に行くと、男の人から触ってくるし、パンツ見せろとか、実態はそんなのよ」と当時の状況を振り返りました。当時はセクハラを乗り越えなければ議員になれない、と感じるほどの状況だったと野田氏は述べます。しかし、二度と次の世代の女性議員に同じ経験をさせたくないという強い思いを語り、セクハラという言葉が生まれたことで一定の抑止力にはなっていると指摘しました。
日本の政治におけるハラスメント問題を語り合う野田聖子議員と辻元清美議員
女性議員に向けられる「票ハラスメント」:罵声と圧力
辻元氏は、身体的な接触はなかったものの、街頭演説中に年配の男性から「うるさい女」「売国女」といった罵声を浴びせかけられる経験を語りました。これは、自身が男性議員であれば、そこまで扱われることはないだろうと感じる、女性を下に見る差別意識が背景にあると分析しています。
また、議員の給料が税金から支払われているという意識から、「俺らが食わせてやっている」という気持ちで、議員や候補者に何を言っても許されるという風潮があるとも指摘。これが女性政治家相手になると、さらにタガが外れてしまうと述べました。
セクハラと同様に、近年「票ハラスメント」、通称「票ハラ」という新しい言葉も出てきています。これは、票が欲しい候補者が、有権者からの不当な要求や圧力に耐えなければならないという状況を指します。辻元氏は具体例として、支援者の会合で男性議員がお酒を注いで回る中、自身は「皆さん元気ですか?」と挨拶はしても、決して酒を注ぎには回らないと語りました。その結果「辻元は酒も注ぎに来ないな」と言われることもあるそうですが、自身の信念を貫く姿勢を示しています。
支援者からのハラスメント:複雑な人間関係
ハラスメントは様々な形をとり、特に支援者からのものは時に最も厳しいものとなり得ます。野田氏は、お酒が好きだからこそ、支援者の席では全員と一緒に飲み、注がれたらお礼に注ぎ返すという独自のやり方で、こうした状況に対応してきたと明かしました。同じ状況でも、個人の性格やスタンスによって対応が異なることが浮き彫りになります。
まとめ
野田聖子氏と辻元清美氏の対話からは、日本の政治における女性議員が直面するセクハラや票ハラといった根深いハラスメントの実態が明らかになりました。言葉なき時代に耐え忍んだ苦痛、そして現代においても続く性差別的な言動や有権者からの圧力。これらの問題は、単なる個人の経験に留まらず、日本の政治文化と社会における男女格差の課題を浮き彫りにしています。次世代の女性政治家がより良い環境で活躍できるよう、ハラスメントの根絶と真の男女共同参画社会の実現に向けた継続的な努力が求められています。
参考文献
- 野田聖子, 辻元清美. 『女性議員は「変な女」なのか 私たちの議員生活30年』より一部抜粋・編集.
- Yahoo!ニュース. 「パンツを見せろ」「触られるのが当たり前」…野田聖子と辻元清美が語る、政治家人生30年間の壮絶セクハラ・票ハラの実態. https://news.yahoo.co.jp/articles/6b0b1b1b01e516d157ca77bf3a0b044fd0618634