トランプ政権の「美しい」新税制OBBBAの実態:国民は恩恵か、それとも負担増か

トランプ政権が鳴り物入りで発表した新税制「One Big Beautiful Bill Act(OBBBA)」は、その名称が示す通り「大規模で魅力的」な減税を強く連想させます。しかし、その実態は「制限だらけ」との批判が絶えません。チップや時間外手当、自動車ローン利息の非課税措置には厳しい上限や所得制限が設けられ、多くの一般世帯に恩恵が及ばないことが指摘されています。さらに、ギャンブル課税強化といった国民負担増につながる条項も含まれており、国民からは「結局は見かけ倒しではないか」との疑念の声が広がっています。本記事では、このトランプ政権の新税制と関連する関税政策の実態を深掘りします。

関税政策と国民への負担増加

トランプ政権下で導入された関税措置は、ペンシルベニア大学の調査によると、約1,270億ドルの収入を国にもたらし、前年同期比で約720億ドルの大幅な増加を記録しました。しかし、政権が当初公約として掲げた「年収20万ドル以下の世帯は所得税不要」という目標は、残念ながら実現していません。2022年度のデータでは、年収17万9,000ドル未満の納税者が納めた所得税額は実に6,000億ドルに達しており、関税収入の増加だけでは国民の税負担を相殺するには程遠い状況です。結局、これらの関税は輸入業者を介して最終的に消費者の負担となり、国境の壁建設費用と同様に「国民にツケを回しているだけ」という批判が強まる結果となりました。

トランプ政権の税制改革と経済への影響を考えるビジネスパーソントランプ政権の税制改革と経済への影響を考えるビジネスパーソン

「One Big Beautiful Bill Act」の内情:名ばかりの減税策

新税制「OBBBA」は、その華やかなネーミングとは裏腹に、実際には「Big」でも「Beautiful」でもないという評価が定着しています。米有力紙ウォール・ストリート・ジャーナルも、「政権が宣伝するほど美しいものではない」と厳しく指摘しています。この評価の背景には、いくつかの決定的な理由が存在します。

まず、OBBBAの多くの減税条項は時限立法であり、数年後には失効する仕組みとなっています。これにより、一時的な減税効果はあっても、国民が期待するような恒久的な恩恵にはつながらない点が大きな問題です。また、ほとんどの措置には所得制限が設けられており、高所得層は対象外となるか、控除額が段階的に縮小される設計になっています。

さらに、制度設計上の偏りも指摘されています。特にチップや時間外手当の非課税措置では、同じ収入水準であっても独身者の方が減税の恩恵を受けやすく、夫婦合算で申告する家族世帯は不利になるケースが目立ちます。政権は「中間層の支援」を主要な目的として掲げましたが、実際には家族世帯よりも単身者を優遇する内容となっており、当初の政策目標との乖離が浮き彫りになっています。

結論

トランプ政権が打ち出した「One Big Beautiful Bill Act(OBBBA)」は、その魅力的で大規模な減税を連想させる名称とは裏腹に、厳しい制限や時限的な措置、さらには特定の層に偏った恩恵しかもたらさない実態が明らかになりました。関税収入の増加も国民の税負担を補うには至らず、最終的には消費者がそのツケを払う構図となっています。これらの政策は、国民が期待した「大規模で美しい」減税とはかけ離れたものであり、その実効性と公平性に対して多くの疑問符が投げかけられています。