米南部テキサス州ヒューストンで、住宅の玄関ベルを鳴らして逃げる「ピンポンダッシュ」をしていた11歳の少年が撃たれて死亡する事件が発生し、地元警察はゴンサロ・レオン容疑者(42歳)を殺人容疑で訴追したと2日に発表しました。このいたずらが悲劇的な結末を招いた背景には、SNSでの流行と銃社会アメリカの深刻な現実が横たわっています。レオン容疑者は同日午前に拘置施設に収容され、事件の全容解明が進められています。
少年が玄関ベルを鳴らし逃走中に被弾
ヒューストン警察によると、フリアン・グスマン君はレオン容疑者の住宅の玄関ベルを鳴らした後、その場を走り去ろうとした際に発砲されました。目撃者の証言からも、少年がベルを鳴らしてから家から離れる途中で撃たれたことが確認されています。ヒューストン警察殺人課のマイケル・キャス巡査部長は、発砲があった場所が家のすぐ近くではなかったため、正当防衛には当たらないとの見方を示しました。検視報告書によれば、グスマン君が撃たれた際、容疑者から少なくとも約6メートル(20フィート)離れており、これは脅威となる距離ではなかったとハリス郡の地方検事ショーン・ティア氏はCNNに語っています。「彼は11歳の少年がするような、近所の人たちにいたずらをしていただけだった。それが彼の命を奪った」とティア氏は述べ、事件の不当性を強調しました。
テキサス州ヒューストンで「ピンポンダッシュ」中に銃撃され死亡したフリアン・グスマン君(11歳)
SNSで人気化する「ピンポンダッシュ」とその危険性
「ピンポンダッシュ」は古くからあるいたずらですが、近年では動画投稿アプリ「TikTok」などのSNS上で挑戦企画として人気が高まっています。玄関のドアを叩いたり蹴ったりする様子を撮影した動画も多数投稿されており、いたずらのエスカレートが懸念されています。このような行為が銃撃事件に発展するケースは、今回が初めてではありません。今年5月にはバージニア州で18歳の高校生がピンポンダッシュを撮影中に撃たれて死亡し、発砲した男は第2級殺人罪で起訴されました。また、2020年には、ピンポンダッシュのいたずらに報復として車を衝突させられた16歳の少年3人が死亡する事件も発生。加害者は殺人罪で有罪となり終身刑を言い渡されています。
深夜に遊んでいた少年を襲った悲劇
今回のヒューストンでの事件は、グスマン君と友人らが自宅近くの通りで午後11時ごろに遊んでいた際に発生しました。家の中から出てきた人物によって銃撃されたグスマン君は、病院に搬送されましたが翌日死亡が確認されました。レオン容疑者は2日に初めて出廷し、国選弁護人の選任に同意しました。現時点では保釈金は設定されておらず、3日に再び出廷し、保釈の可否が判断される見通しです。
結び
無邪気な「ピンポンダッシュ」といういたずらが、アメリカの銃社会において命を奪う悲劇に繋がるという現実は、社会に大きな衝撃を与えています。この事件は、子供たちの行動が予期せぬ結果を招く可能性と、銃器の安易な使用がもたらす深刻な影響について、改めて警鐘を鳴らすものです。