【ニューヨーク=小林泰裕】米IT大手グーグルの検索サービスの市場独占を巡る反トラスト法(独占禁止法)訴訟で、米首都ワシントンの連邦地裁は2日、グーグルが独占解消のためにウェブブラウザー「クローム」を売却する必要はないとの判決を下した。グーグルにとって事実上の勝訴で、検索サービスで世界シェア(占有率)の9割を握る「ITの巨人」が事業分割を迫られる可能性はひとまず後退した。
同地裁は判決文で、原告の米司法省が求めていたクロームの売却案について「原告が強制売却を求めたのは行き過ぎだ」と指摘し、退けた。米司法省はクロームがグーグルの検索サービスの利用基盤となっているため、売却する必要があると訴えていた。
グーグルが市場独占の解消に取り組まない場合に、米司法省が条件付きで求めていた基本ソフトウェア(OS)「アンドロイド」の売却案についても退けた。
また、グーグルは年間数兆円もの金銭を米アップルや韓国サムスン電子などに支払い、その対価としてグーグル検索をスマートフォンの初期設定などとして優遇するよう求めてきた。
米司法省は、こうした契約慣行が検索サービスへの他社の参入を阻害していると訴えたが、同地裁は2日、「こうした支払いを禁止すればスマホ事業者や消費者に大きな不利益が及ぶ恐れがある」と指摘。競合他社を排除する内容が含まれない限り、アップルなどに対価を支払うことは禁止されないとの見方を示した。
一方で、独占解消に向け、グーグルが検索サービスを通じて得たデータを他社と共有するよう命じた。これにより、競合他社も優れた検索エンジンを開発できるようになると期待される。
米司法省は検索サービスの独占を巡って2020年にグーグルを提訴し、米首都ワシントンの連邦地裁は24年8月、グーグルの検索サービスが反トラスト法に違反しているとの判決を下した。グーグルへの具体的な処分内容については今夏にも決定される見通しだった。