交際解消トラブル、警察の目を欺き凶行に及んだ韓国人容疑者の悲劇

別れ話を切り出されたことを発端とし、交際相手の女性を殺害した韓国人男性の事件は、その経緯と容疑者の巧妙な手口が波紋を呼んでいます。警視庁が事前にトラブルを把握し、容疑者に帰国を促すなど対応を取っていたにもかかわらず、容疑者はその目を欺き、再び女性に接近して凶行に及んだとされています。今回の事件は、交際トラブルの深刻さと、それを防ぐことの難しさを浮き彫りにしています。

世田谷区女性殺害事件の概要と逮捕

事件が発生したのは9月1日午後1時半頃、世田谷区内のフォトスタジオ敷地内でのことでした。韓国籍の自営業、バン・ジ・ウォンさん(40)が刃物で首を切りつけられ、血だらけの状態で発見されました。バンさんは病院に搬送されたものの、同日午後3時頃に死亡が確認されました。その後、警視庁は事件発生からわずか数時間後、羽田空港第3ターミナルで国外に出ようとしていた韓国在住のパク・ヨンジュン容疑者(30)を確保。翌2日、殺人容疑で逮捕に至りました。

交際女性殺害容疑で逮捕された韓国籍のパク・ヨンジュン容疑者交際女性殺害容疑で逮捕された韓国籍のパク・ヨンジュン容疑者

交際トラブルと過去の暴力訴え

バンさんとパク容疑者は昨年10月、日本語学習アプリを通じて知り合い、今年4月から交際関係にありました。事件直前の8月23日にはパク容疑者が来日し、バンさんが住む港区のマンションで寝泊まりしていたといいます。事態が動き始めたのは、警視庁が2人のトラブルを初めて把握した8月29日未明です。バンさんが居酒屋でパク容疑者に「別れたい」と切り出したところ、パク容疑者は激怒し、一人でマンションに帰ってしまいました。深夜3時過ぎ、バンさんは「暴力を振るわれるのが怖くて、一人で家に帰れない」と近くの交番に駆け込み、警察に相談しました。

通報を受け、三田署は2人を署に呼び、詳しく事情聴取を行いました。バンさんは、2日前にパク容疑者から顔や腹を殴られ、肩を激しく揺さぶられるなどの暴力を受けたと訴えました。実際、彼女の左肩にはその際の被害と見られるアザが確認されたものの、パク容疑者は一貫して暴力を否定。客観的な証拠が乏しく、バンさんも被害届を提出しなかったため、この時点では事件として立件されませんでした。

世田谷区の殺人事件現場近くで捜査活動を行う警察官たち世田谷区の殺人事件現場近くで捜査活動を行う警察官たち

警察の対応と容疑者の巧妙な欺瞞

三田署は、パク容疑者をバンさんの自宅に戻すことは危険だと判断し、彼に韓国への帰国を促しました。パク容疑者が「帰国前に大阪に行きたい」と申し出たため、署員は東京駅まで同行し、見送りをしました。一方、バンさんには万が一の事態に備え、しばらくの間、知人宅に避難するようアドバイスを与えていました。

しかし、パク容疑者は警察の目を欺く巧妙な手口で凶行に及びました。東京駅で署員に見送られた後、彼は羽田空港の保安検査場まで入ったものの、直前で航空券をキャンセルして外に出たのです。こうして帰国したと見せかけ、再びバンさんに忍び寄り、世田谷区のフォトスタジオ敷地内で悲劇的な殺人事件を引き起こしました。警察の介入があったにもかかわらず防ぎきれなかったこの事件は、DV問題やストーカー行為の難しさ、そして犯罪者の予測不能な行動がもたらす危険性を改めて社会に問いかけています。

参考文献