日本の人口戦略と外国人労働者の未来:橋下徹氏の提言

日本における外国人労働者の数は近年、著しい増加傾向にあります。厚生労働省の発表によると、昨年には日本で働く外国人労働者数が過去最多の230万人を突破し、国別ではベトナム出身者が約57万人と最も多くを占めています。この現状に対し、関西テレビの神崎博報道デスクは、「コロナ禍が明けて外国人の人口が急増し、現在では全人口の約3%に達している。国は将来的に10%まで増加すると見越し、プロジェクトチームを立ち上げて外国人との共生について検討を始めている」と指摘。鈴木法務大臣も、「2040年頃には外国人比率が10%を超えることも当然想定しておかなければならない」との見解を示しており、日本の社会構造における外国人材の役割が益々重要になっていることが伺えます。

増加する外国人労働者の現状と日本の人口動態を表すビジュアル増加する外国人労働者の現状と日本の人口動態を表すビジュアル

「将来の日本の人口の目標が定まってない」と指摘

しかし、この外国人労働者と日本の将来に関する議論の前提として、番組コメンテーターの橋下徹氏は、日本の政治が「国の人口目標」を明確に定めていない点を厳しく指摘しています。橋下氏は、「日本の政治は、自国の人口をどれくらいにするかという目標が今ない。2014年に安倍政権が『骨太の方針』で掲げた約1億人、約1億1000万人維持という現状維持目標は、もはや不可能だ」と述べました。統計学的な予測では、2070年には日本の人口が8700万人に、そして2100年には半減して6000万人程度になるとされており、安倍政権時代の目標はいつの間にか曖昧になり、消え去ってしまったのが実情です。橋下氏は、「我々は日本の国をどれぐらいの人口にするのか分からないまま、少子化対策や外国人問題に取り組んでいる」と現状に警鐘を鳴らし、統計学的に見ても2070年には日本人約7900万人に対し、外国人約900万人を受け入れざるを得ない状況が来るとの見方を示しました。

「外国人には“社会の構成員”として入ってきてもらう」

青木源太キャスターが「人口目標よりも、どれだけの経済レベルを維持するか、GDPをどうするか、という考え方か」と問いかけると、橋下氏は「それも踏まえてだ」と応じました。人口減少が進めば経済も衰退するため、日本は約8000万人程度の人口を維持する必要があるが、現在の1億1000万人維持はもはや現実的ではないと強調。この前提に立つと、外国人を単なる「労働力」として受け入れるだけでは不十分であり、彼らを「社会の構成員」として迎え入れるべきだと提言しました。

現状では、外国人を労働力として安易に受け入れ、低賃金で働かせている側面があるのに対し、社会の構成員として受け入れる場合、日本人と同等の高い賃金を支払うことになります。その代わりに、日本人がこれまで問うてこなかった「言語能力」や「日本の文化・習慣」といった要素を、試験などを通じてしっかりと問い、基準を満たした上で受け入れる仕組みを構築する必要があるというのが橋下氏の主張です。これにより、外国人労働者の単なる労働力としての活用から、より深く社会に根ざした共生へとパラダイムシフトを図るべきであると強く訴えています。

現在の日本の人口構造が直面する課題は深刻であり、外国人労働者の増加は避けて通れない現実です。しかし、彼らを単なる労働力と見なすのではなく、社会の重要な構成員としてどのように受け入れ、共生していくのかという長期的なビジョンと具体的な戦略が今こそ求められています。橋下徹氏の提言は、日本の将来を見据えた人口戦略の議論に、新たな視点と問いを投げかけるものです。


参考文献: