9月2日夕刻、愛車で帰宅した伊東市長の田久保眞紀氏(55)は、待ち構える報道陣に対し、いつものように冷静に取材をかわした。去り際に一礼して見せた笑顔は、どこかぎこちない。前日の定例市議会で、学歴詐称疑惑に端を発した田久保市長に対する不信任決議案が全会一致で可決され、市長はまさに政治的な瀬戸際に立たされている。
伊東市長に突きつけられた「不信任決議」の重み
今回の不信任決議は、市長選における学歴詐称疑惑が主な引き金となり、市議会で採択された。9月1日に可決されたことにより、田久保市長は10日以内に議会を解散し市民の信を問うか、あるいは自ら市長を辞職するかの選択を迫られることになる。この決断は伊東市の今後の市政に大きな影響を与えるだろう。
市議会内の厳しい声と離反
不信任決議案の審議中、市議会内からは田久保市長に対し厳しい言葉が相次いだ。特に、四宮和彦市議は市長を「本市の負の象徴」とまで批判し、その態度の不透明さを指摘した。
さらに注目すべきは、かつて市長選で田久保氏を応援し、疑惑の浮上当初は擁護する姿勢を見せていた重岡秀子市議の離反である。重岡氏が所属する共産党静岡県委員会と伊豆地区委員会は、不信任決議に先立つ8月29日、「市長の態度は不信任に値するものであり、自ら市長を辞職すべき」と連名で声明を発表。これを受け、重岡市議も最終的に不信任票を投じた。これにより、田久保市長は市議会内で完全に孤立無援の状態に陥っている。
伊東市議会で不信任案が可決され、厳しい状況に置かれる田久保眞紀市長(2025年9月1日撮影)
マスコミとの溝深まる「取材拒否宣言」
市議会での孤立に加え、田久保市長とマスコミ各社との関係も悪化の一途を辿っている。8月29日の定例会見で、田久保市長は「まだ決まっていないことについて報道が走っている。しばらくフリーの質問は控えさせていただく」と異例の「取材拒否宣言」を行った。不信任決議後の取材においても、「(不信任決議の結果を)いったん持ち帰って考えたい」と述べるにとどまり、ぶら下がり会見には応じなかった。このような市長の姿勢に対し、いら立ちを募らせた一部の記者からは怒号が飛ぶ場面も見られたという。
SNSで活発な「私見」発信、孤立無援からの「反撃」の兆し
百条委員会の開催以降、田久保市長は自身のSNS上での情報発信を活発化させている。8月に入ってからは、自身の公約にも掲げていたメガソーラー問題について繰り返し言及し、「工事は止まっていますが、事業そのものは無くなっていませんし、裁判も続いていて予断を許さない状況」(8月20日)などと投稿。これは、水面下で何らかの動きがあるかのように印象付け、支持層へのアピールを図る意図があるものと見られている。
周囲から四面楚歌の状態にある田久保市長だが、こうしたSNSでの発信や、不信任決議後の慎重な対応の裏には、「反撃」の狼煙をあげようとする戦略があるとの指摘も出ている。キー局の報道部記者は、市長がこの窮地を打開するための次の一手を模索している可能性を示唆する。
結論
学歴詐称疑惑と不信任案可決という、かつてない政治的危機に直面している伊東市の田久保眞紀市長。市議会での完全な孤立、マスコミとの対立が深まる中でも、SNSを通じて自身の見解を発信し、状況を打開しようとする姿勢が見て取れる。果たして市長は議会解散を選択するのか、それとも辞職するのか、あるいは孤立無援の状態から「反撃」に転じることができるのか。今後の動向が注目される。