公安審査委員会は9月3日、オウム真理教の後継団体とされる「アレフ」に対し、団体規制法に基づく「再発防止処分」の継続を決定しました。この決定において特に注目されたのは、麻原彰晃こと松本智津夫・元死刑囚の二男(31)がアレフの「役職員」であると初めて認定された点です。これは、アレフの活動実態と指導体制を巡る懸念を改めて浮き彫りにするものであり、今後の公安当局による監視強化の動きが予想されます。
麻原彰晃二男の「役職員」認定と資産報告の不備
アレフは団体規制法に基づき「観察処分」の対象となっており、公安調査庁から活動内容や資産状況の報告が義務付けられています。しかし、アレフは資産などを正確に報告していなかったことが明らかになっています。今年4月には、松本元死刑囚の二男が暮らす埼玉県越谷市内の自宅が家宅捜索を受け、部屋の中から現金数千万円が見つかるという事態も発生しました。
これにより、公安調査庁は観察処分を半年間継続するよう請求し、公安審査委員会がこれを認める形で処分継続を決定したのです。今回の決定で、松本元死刑囚の二男がアレフの「役職員」として公式に認定されたことは、教団内部における彼の役割の重要性を示すものと見られています。また、日本テレビが入手したとされる、二男と見られる男性が参加するアレフ教団内部会議の音声記録では、彼が自らを「教祖」と呼んでいたと報じられ、更なる波紋を呼んでいます。
オウム真理教元代表、麻原彰晃こと松本智津夫元死刑囚の肖像。アレフの活動と関連付けられる人物。
地下鉄サリン事件から30年:若者への巧妙な勧誘活動
オウム真理教が地下鉄サリン事件を起こしたのは1995年3月20日、今から約30年前のことです。死者14人、負傷者6000人以上を出したこの凶悪事件は日本社会に甚大な衝撃を与えましたが、現在30代前半以下の若い世代は、この事件をリアルタイムで経験していません。警察・公安当局は、この世代への勧誘活動に大きな懸念を抱いています。
公安関係者によると、アレフはオウム真理教が引き起こした一連の事件を知らない若い世代を中心に、教団名を隠してインターネットなどを通じて巧妙な勧誘活動を展開しているといいます。当時の事件に関する注意喚起はポスターやネットなどで行われているものの、アレフは信者を巧みに取り込んでいる現状があるようです。彼らは依然として松本智津夫・元死刑囚が説いた教義をベースにした信仰を続けており、公安当局は引き続き警戒が必要であると考えています。
公安当局の継続的警戒と地域住民の不安
令和7年版の警察白書でも、「公安情勢と諸対策」の節において筆頭に「オウム真理教の動向と対策」が掲げられています。掲載された図によれば、アレフを含む「オウム真理教の拠点施設等」は令和7年1月末現在で全国15都府県に30施設存在し、関東地方だけでも「足立入谷施設」「新保木間施設」「西荻施設」など10以上の拠点があることが示されています。
警察白書はまた、「拠点施設が所在する地域においては、教団の活動に対する不安感が強く、住民が対策組織を結成している地域もある」と指摘しています。昨年には、埼玉県八潮市の大瀬施設に対し、110名の住民が退去を求めるデモを実施し、退去要請書を施設に届けるなど、拠点周辺住民の不安は依然として根強い状態が続いています。当局は今後も、アレフの活動実態を継続的に明らかにし、国民の不安解消に努めていく方針です。
参考文献
- Yahoo!ニュース (2025年9月3日). 公安委、アレフの再発防止処分継続を決定 麻原彰晃二男の「役職員」認定に注目.
https://news.yahoo.co.jp/articles/1460dd54e64b5d50c25372703b34c10413b046a3 - NEWSポストセブン (2025年9月5日). 松本智津夫・元死刑囚の二男宅。他、オウムの拠点マップも.
https://www.news-postseven.com/archives/20250905_2062181.html - 警察庁. 令和7年版 警察白書.