昨今の日本の少子化は、ほぼ婚姻数の減少によって説明できます。この婚姻減は特に20代の減少に集約されており、その背景には中間層が結婚できない経済環境の厳しさがあることが浮き彫りになっています。これは若者の「結婚離れ」といった価値観の変化ではなく、より根深い構造的な問題であることを、これまでの連載でも繰り返し指摘してきました。しかし、婚姻減の要因は経済環境に留まらず、若者を取り巻く社会環境の変化も大きく影響しています。その結果、結婚を望む男女間に微妙な食い違いが生じ、マッチング不全を引き起こしている点も看過できない要因です。
「結婚したい」という男女の意識のズレ
出生動向基本調査によれば、1990年代から30年以上にわたり、20代から30代の独身男女における「結婚前向き率」は男性約4割、女性約5割で推移しており、この男女間の約10%の乖離は常に存在しています。さらに、年齢別に詳しく見ていくと、そのズレがより鮮明になります。以下のデータは、筆者の研究室で調査した結果に基づいています。
20代の「結婚したい女性余り」と40代の「結婚したいおじさん余り」
5歳階級別の男女それぞれの「結婚前向き率」を見ると、年齢によって結婚に対する意欲が男女で逆転していることがわかります。20代では、女性の66%が結婚に前向きであるのに対し、男性は20〜24歳で40%、25〜29歳でも51%と低い水準に留まります。男女ともに年齢が上がると結婚前向き率は低下しますが、40歳以上になるとこの前向き率は男女で逆転します。
これはつまり、女性が最も結婚したいと考える20代の時期に、同年代の男性は結婚に対して後ろ向きであるため、同じ年代の相手を探そうとすると「女性余り」の状態が生じることを意味します。反対に、40歳以上になると「結婚したいおじさん余り」の状況となり、これが「婚活をしても相手が見つからない、いるのはおじさんばかり」という婚活女性の嘆きに繋がる現実を反映していると言えるでしょう。
結婚に対する男女の意識差を示すグラフのイメージ
恋愛中のカップルに見られる男女差の背景
「結婚したい」と思っている未婚男女全体の話であれば、恋愛中のカップルでは同数になると考えられがちですが、実情は異なります。「現在恋人がいる」という男女の割合を年齢別に示した以下のグラフを見ると、すべての年齢層において男性の割合が女性を下回っています。恋愛中のカップルは原則として同数になるはずですが、これは未婚の絶対人口が男性のほうが多いことに起因しています。
まとめ
日本の少子化問題は、単なる若者の「結婚離れ」ではなく、20代を中心とした婚姻減が主要因であり、その背景には経済環境の厳しさが深く関わっています。加えて、結婚に対する男女間の意識のズレが、特に20代では女性が結婚に意欲的な一方で男性が消極的であるという「結婚したい女性余り」を生み出しています。一方で40代以上では「結婚したいおじさん余り」という現象が見られ、これが現代の日本の未婚化・少子化を複雑にしている社会的なマッチング不全の実態を浮き彫りにしています。





