婚活バトルフィールド37が連載完結!作者・猪熊ことりが語るリアルな婚活事情と創作の裏側

近年、結婚するカップルの約3組に1組がマッチングアプリで出会うと言われる一方、結婚相談所の利用も増加の一途をたどっています。そんな現代のリアルな「婚活」事情をユーモラスに描き、多くの読者の共感を呼んだ漫画『婚活バトルフィールド37』(猪熊ことり作)が、この度連載を終えました。本作はX(旧Twitter)でも高い人気を博し、婚活世代の読者から熱い支持を集めています。今回、作者の猪熊ことり氏に、作品への思い、創作の裏側、そして兼業作家としての苦労や婚活市場に対する見解について、詳細を伺いました。

婚活バトルフィールド37の単行本表紙。主人公が婚活の最中に立つ姿を描き、作者は猪熊ことり。婚活バトルフィールド37の単行本表紙。主人公が婚活の最中に立つ姿を描き、作者は猪熊ことり。

SNSでの反響と読者との繋がり

猪熊氏は、単行本発売の際にXで宣伝活動を行っていたものの、それが直接的な売上や連載継続に大きく影響した手応えはなかったと振り返ります。むしろ、他のユーザーからの投稿が読者層の拡大に繋がったと感じており、そうした方々への感謝の念を抱いていると語りました。

読者からの感想については、「Xで検索できる投稿はほとんど読んでいますし、全ての感想が印象に残っています」と述べ、ファンアートが少ないため、見つけるたびにスクリーンショットを撮って大切に保存しているそうです。この場を借りて、感想を寄せてくれた読者への感謝を改めて伝えたいとしています。

漫画『婚活バトルフィールド37』の挿絵。婚活のベテランという表現を問いかけるセリフと共に、主人公の複雑な表情が描かれている。漫画『婚活バトルフィールド37』の挿絵。婚活のベテランという表現を問いかけるセリフと共に、主人公の複雑な表情が描かれている。

「婚活」テーマ選定の理由と自身の経験

なぜ「婚活」をテーマに選んだのかという問いに対し、猪熊氏は自身の婚活経験があったため、ゼロからの取材と比較して連載開始のコストが少なかったからだと答えています。この個人的な経験は、作品中の細かな描写にも活かされています。

例えば、結婚相談所の入り口が分かりにくいというエピソード(2巻11話)や、相手からの申し込みが落ち着いている時期を狙って自分から申し込むといった戦略(4巻25話)など、どうでもいいような小ネタに自身のリアルな婚活経験が反映されているとのことです。これらの細部にリアリティが宿ることで、読者はより深く作品世界に没入することができました。

兼業作家としての苦悩と作画へのこだわり

会社員と漫画家を兼業する猪熊氏にとって、連載中の苦労も少なくなかったようです。ウェブ媒体での連載だったため、比較的スケジュール調整は柔軟で締め切りには余裕があったものの、兼業である以上、完全な休日を確保するのが難しいと語ります。1日の中で作業と休憩を切り替える必要があり、その意識の切り替えに最も苦労したと明かしました。

作画に関しては、特に真面目なシーンを描く際に「光・影・天気・時間」といった要素を意識して表現することを心がけたといいます。これにより、感情や状況の深度がより豊かに描かれ、読者に強い印象を与えています。

婚活市場の動向と作者の視点

SNSなどを通じて婚活市場が盛り上がりを見せ、注目される機会が増えていることについて、猪熊氏自身も市場の活況を実感していると述べました。しかし、同時に「なんとなくですが、婚活業界が盛り上がっても全体の婚姻率が増加することはなさそうな気がします」という冷静な見解も示しています。これは、市場の盛り上がりが必ずしも個人の結婚に直結しないという、婚活の現実を洞察した意見と言えるでしょう。

連載完結の心境と今後の展望

『婚活バトルフィールド37』の連載を終えた現在の心境について、「ホッとしています」と率直な気持ちを語った猪熊氏。自身にとって本作は「初連載であり、難しい漫画だった」と振り返り、「色々な意味で思い入れのある作品」であると締めくくりました。

次回作についてはまだ何も考えていないとのことですが、今後の展望としては「もっと漫画が上手くなりたい」という向上心をのぞかせました。この言葉からは、漫画家としての探求心と、読者にさらに良い作品を届けたいという情熱が感じられます。

『婚活バトルフィールド37』は、現代の婚活のリアルな側面と、それに挑む人々の心情を丁寧に描いた作品として、多くの読者に支持されました。猪熊ことり氏の次なる挑戦にも期待が高まります。

参考資料