近年、日本映画界は大きな盛り上がりを見せていますが、その中で特に注目されているのが、俳優・吉沢亮さん(31)主演の映画『国宝』と、永野芽郁さん(25)主演の『かくかくしかじか』です。両作は公開前から高い期待を集めていましたが、興行収入においては明暗がはっきりと分かれました。本記事では、この二つの作品がたどった異なる道のりを深く掘り下げ、それぞれの成功と苦戦の背景にある要因を、日本の映画市場と社会情勢の観点から分析します。
「国宝」の驚異的なヒットとその要因
吉沢亮さん主演の映画『国宝』は、公開からわずか77日で興行収入110億円を突破し、観客動員数も782万人に達しました。これにより、実写邦画の歴代興行収入ランキングで1983年公開の『南極物語』を抜き、堂々の第2位に浮上。2003年のヒット作『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』が記録した173億円にどこまで迫れるか、その動向が大きな注目を集めています。
主演を務めた吉沢亮さんは、「たとえ少数でも見てくれた方の人生に寄り添うような心から大切に思ってもらえるような映画にしたいという思いでこの作品に参加しました。こんなにも沢山の方に愛していただき、感謝しかございません」と、作品への深い思いと感謝の気持ちを語っています。
『国宝』は、吉田修一氏の同名小説を原作としており、任侠の一門に生まれた主人公・喜久雄(吉沢亮)が、抗争で父親を亡くした後、上方歌舞伎の名門当主・花井半二郎に引き取られ、歌舞伎の世界へと足を踏み入れる壮大な物語です。『フラガール』で知られる李相日氏が監督を務め、その手腕が光る作品となっています。
元『東京スポーツ新聞社』文化社会部部長で、現在も日本映画ペンクラブ会員である阪本良氏は、この映画の成功について次のように分析しています。「前評判も高く、30億円くらいのヒット作になるとは思っていましたが、まさか歴代1位に迫るような国民的メガヒットになるとは誰も想像していなかったでしょう。ヒットした理由の一つは、主演の吉沢さんと横浜流星さん(28)が1年半もの歌舞伎稽古を重ね、市川團十郎氏をはじめとする本物の歌舞伎役者が賞賛するほどの舞踊や演技を披露できたこと。もう一つは、吉沢さんと横浜さんの立場が二転三転するストーリーの面白さが、幅広い層にウケたということでしょう」。
映画『国宝』主演の吉沢亮と『かくかくしかじか』主演の永野芽郁の比較イメージ
「かくかくしかじか」の苦戦とその背景
一方、『国宝』と並び、公開前から高い評価を受けていた永野芽郁さん主演の『かくかくしかじか』は、予期せぬ苦戦を強いられ、いつの間にか興行市場から埋没してしまいました。
本作は、東村アキコ氏の同名自伝漫画を実写化したもので、漫画家を夢見る女子高生・明子(永野芽郁)と、竹刀片手にスパルタ指導を行う絵画教師・日高先生(大泉洋)との9年間の日々を描いた感動的な作品です。5月16日に全国公開されると、公開3日間で興行収入1.7億円を記録し、「実写邦画1位の好スタート」と報じられました。しかし、7月28日時点での興行収入は8億7700万円、観客動員数は66.4万人と伸び悩み、当初の期待には届かない結果となりました。
映画関係者は、「豪華キャストに加え、プロモーション費用も億単位かかっている。この規模の映画であれば興行収入20億円が最低ラインだと思う。それが7月末時点で10億円に届くか届かないかというのは、期待外れと言っていい。そもそも封切り3日で1.7億円というのも、そこまで威張れる数字ではなく、業界では『ヤバイんじゃないか……』という声が多かった。『口コミでどんどん拡大していった『国宝』とは全く違った」と、作品の現状に対する厳しい見方を示しています。
永野芽郁と田中圭の不倫疑惑が落とす影
作品自体は「泣ける」「感動した」と高い評価を得ているにもかかわらず、『国宝』とは興行収入で10倍以上の大差がついた『かくかくしかじか』。その最大の原因として指摘されているのが、公開直前に報じられた永野芽郁さんと俳優・田中圭さん(41)の不倫疑惑です。
この疑惑は『週刊文春』(5月1日・8日合併号)が報じたもので、永野さんが酔った田中さんを自宅マンションに招き入れる様子や、2人のものとされるプライベート写真、LINEの記録が流出。両者はともに「先輩後輩の間柄」と不倫関係を否定しましたが、それぞれが抱えていたテレビCMは非公開となるなど、その影響は甚大でした。
スポーツ紙芸能担当記者は、「永野さんはTBS系ドラマ『キャスター』のクランクアップ後、金髪にイメチェンして日本を離れたと報じられました。田中さんもお忍びでポーカーの国際大会に出場したことが判明。つい最近もスペインの大会に参加していましたね。こうした“開き直り”とも取れる2人の行動に疑問を感じている人は多いと思います」と、世間の冷ややかな反応を伝えています。
今後の永野芽郁のキャリアへの影響
永野さんは7月28日にカナダ・モントリオールで開催された『第29回ファンタジア国際映画祭』に原作者の東村アキコ氏とサプライズ登壇し話題となりましたが、これが『かくかくしかじか』の追い風となることはありませんでした。首都圏での公開はすでに終了し、現在上映されているのは宮崎県内の1館のみ、それも1日1回の上映にとどまっています。
前出のスポーツ紙記者は、「『国宝』とまではいかなくとも、不倫疑惑をものともせずにヒットしていれば、永野さんの評価も改められたはず。本人は今後も女優業に邁進していきたいようですが、大作だった『かくしか』で結果を残せなかったのは、やはり厳しい。これまでのようにはいかないでしょう」と語り、永野さんの復帰には暗雲が垂れ込めている状況を指摘しています。映画のヒットは単に作品の質だけでなく、出演者のイメージや社会情勢が大きく影響することを改めて浮き彫りにした事例と言えるでしょう。
まとめ
吉沢亮さん主演の『国宝』は、丹念な役作りと魅力的なストーリーテリングによって、日本映画界に新たな金字塔を打ち立てようとしています。一方、永野芽郁さん主演の『かくかくしかじか』は、作品の質の高さにもかかわらず、公開前のスキャンダルという外部要因が興行収入に大きな影を落とし、苦戦を強いられました。この二つの映画の明暗は、現代のエンターテインメント業界において、アーティストの個人的な行動がその作品、ひいては自身のキャリアに与える影響の大きさを鮮明に示しています。今後の日本映画界の動向、そして永野芽郁さんの今後のキャリアにどのような展開が待っているのか、引き続き注目が集まります。
参考文献
- FRIDAYデジタル: 173億円『踊る大捜査線』にどこまで迫るか 110億円超の『国宝』のウラで、10分の1ほどに惨敗した永野芽郁の『かくかくしかじか』 (Yahoo!ニュース掲載記事より)
- 週刊文春: 2025年5月1日・8日合併号 (永野芽郁と田中圭の不倫疑惑報道に関する情報源)