近年、観測史上最高の記録を更新し続ける猛暑は、私たちの日常生活に大きな変化をもたらしています。日中の外出を控え、エアコンの使用が常態化するなど、人々のライフスタイルは根本から見直されつつあります。このような環境変化は、特定のコミュニティにも影響を及ぼしており、特に「旧車會」と呼ばれるオートバイグループの活動形態に新たな傾向が見られるようになりました。かつては日中の集団走行が主流だった彼らが、猛暑を避けて夜間に繰り出す「ナイツー」(ナイトツーリング)を活発化させており、これが新たな社会問題、特に住民に対する騒音被害を引き起こしています。
観測史上最高の熱波がもたらす生活の変化
記録的な高温が続く中、多くの人々がハンディファンや日傘を日常的に使用するようになりました。これは、もはや夏の風物詩ともいえる光景であり、暑さ対策が個人の生活に深く根付いている現状を示しています。しかし、この異常な熱波は、一般の人々だけでなく、趣味の活動を楽しむ人々にも影響を与えています。その一つが、旧車と呼ばれるヴィンテージオートバイを愛好する「旧車會」です。彼らは通常、暖かくなる季節に活動を活発化させ、夏にはそのピークを迎えますが、今年はこれまでとは異なる対応を迫られています。
日中の爽快なバイクツーリングの様子。しかし今年は猛暑で「ナイツー」が増加している。
住民を悩ませる「深夜の爆音」:埼玉の主婦の訴え
この新たな変化によって、最も直接的な影響を受けているのは、旧車會の活動エリアに住む一般住民です。埼玉県在住の専業主婦は、以前から近所のコンビニエンスストアに集まる旧車會の騒音に悩まされていましたが、最近はその状況がさらに悪化していると訴えます。「まだ昼にやられた方がマシです。夜涼しくなって、エアコンを切って窓を開けると、外からブンブンという音が聞こえてくるので、結局窓を閉め切ってエアコンに頼るしかありません。彼らのことを『虫と一緒』と言いましたが、正直、虫よりも迷惑ですよ」と、その怒りをあらわにしています。
この女性によると、最近の旧車會は、夕方から夜、時には深夜にかけて姿を現すようになったといいます。特に涼しくなる時間帯に、広々としたコンビニの駐車場を拠点に活動するため、騒音によってほとんど眠れない夜もあると訴えています。遠くから聞こえてくるエンジンの爆音は、まるで虫の羽音のように耳につき、深い眠りから覚まされてしまうことも少なくないそうです。パトカーが現場に駆けつけることもありますが、口頭での注意にとどまり、具体的な処罰が下されることはほとんどないため、住民の不満は募る一方です。
専門家が語る「ナイツー」人気の背景
なぜ旧車會の活動が日中から夜間へとシフトしているのでしょうか。旧車會の事情に詳しいアウトロー系雑誌のカメラマンが、その背景について解説します。「夏になると、様々な旧車會チームが数百台規模のバイクを連ねて『ツーリング』に出かけるのですが、最近はとにかく暑すぎます。バイクに乗れば風に当たって涼しいと思われがちですが、この猛暑の中では、日中のアスファルトからの照り返しやエンジンの熱、そして気温そのものが原因で、とても耐えられる暑さではないのです」。
深夜のコンビニ駐車場に集まる旧車會のバイク。夜間走行による騒音問題が深刻化している。
この過酷な日中の暑さを避けるため、旧車會のメンバーの間では「ナイトツーリング」、略して「ナイツー」が急速に普及し、一種の流行となっているといいます。彼らにとっては、日中の暑さを避けつつ趣味を楽しむための合理的な選択肢なのかもしれません。しかし、その活動が夜間に集中することで、一般住民の生活環境に深刻な騒音被害をもたらし、新たな社会問題として浮上しています。この問題に対して、地域社会と行政がどのように向き合い、解決策を見出すのかが今後の課題となるでしょう。
参照元:
Yahoo!ニュース – 猛暑のせい?「旧車會」が「ナイツー」に移行し住民が怒り「昼の方がマシ!虫より迷惑ですよ」