「昨日の敵は今日の友」という言葉が現実のものとなった。自民党と日本維新の会が電光石火で連立協議入りし、早ければ10月20日には両党代表が連立合意に署名、21日には自民・維新連立政権のもと、日本初の女性総理大臣が誕生する可能性が浮上している。公明党の連立離脱からわずか6日という急転直下の展開に、一体何があったのか。ジャーナリスト長島重治氏がその真相に迫る。
連立急進展の背景:「虎キチ早苗」への異例の贈り物
10月15日午後6時、国会内で自民党と日本維新の会の党首会談が始まった。自民党の高市総裁に対し、維新の藤田文武共同代表の隣には、大阪から急遽駆けつけた吉村洋文代表の姿があった。吉村代表は、熱狂的な阪神タイガースファンである高市氏(通称「虎キチ」)への最高のプレゼントとして、地元大阪での阪神タイガース優勝パレードへの招待を用意していた。
高市氏は満面の笑みでこれに応じ、吉村氏が「これだけは絶対に譲れない」と主張する副首都推進法案について、「来年の通常国会での提出を目指したい」と早くも確約してみせた。これは連立協議における維新側の最重要課題であり、交渉の大きな進展を示唆する。
高市早苗氏と日本維新の会代表者が連立協議を行う様子
議席状況と女性総理誕生への具体的な道筋
現在の衆議院の議席は定数465に対し過半数が233だが、自民党(196議席)と維新(35議席)を合わせると231議席となる。これは過半数にあと4議席足りない状況だ。一方、参議院でも定数248に対し過半数が125だが、自民党系(101議席)と維新(19議席)を合わせて120議席となり、こちらもあと5議席が不足している。
しかし、総理大臣指名選挙の仕組みでは、どの候補も過半数に届かなかった場合、決選投票で最も多くの票を得た候補が総理大臣に指名される。つまり、維新との連立協議が成立し、維新議員が総理大臣指名選挙で「高市」と投じるならば、過半数には至らないものの、衆議院で231議席という圧倒的な票数を得ることになる。これにより、10月21日に招集される臨時国会冒頭で、日本初の女性総理大臣が誕生するという歴史的な瞬間が訪れる可能性が極めて高いと見られている。
公明党連立離脱から一転、維新との急接近へ
この急展開は、今月10日に勃発した公明党の連立離脱に端を発する。自公連立は強固な選挙協力基盤の上に26年間も継続されてきたが、その長きにわたる関係がわずか1週間で崩壊した。公明党・創価学会と太いパイプを持つことで知られる菅義偉元首相でさえ、「なぜこんなことになったのか」と嘆くほどの急展開であった。
しかし、この事態から迅速に動き出したのが維新と高市氏だった。元々、維新は自民党総裁選では小泉進次郎氏が勝利すると見ていた。小泉氏を念頭に置き、彼が大阪万博を視察した際には、吉村府知事自ら3時間もの接待を行い、副首都推進法案についてもすぐに審議に入れるよう準備を進めていた経緯がある。この期待が外れた後、維新は新たな可能性を探り、高市氏との接近へと舵を切った形だ。
公明党の連立離脱という激動の中、自民党と日本維新の会の連立協議は日本政治に新たな局面をもたらす可能性を秘めている。特に、高市早苗氏が初の女性総理大臣となるか、今後の交渉の行方、そして臨時国会での動向が日本の政治史に新たな一ページを刻むことになるだろう。その歴史的瞬間への注目は高まるばかりだ。