千葉・船橋ホテル殺人事件:ネパール人青年が抱いた日本への夢、そして悲劇に至るまで

ネパール国籍のチャンタール・バダルさん(21)が交際相手とされる浅香真美容疑者(32)に刺殺されたとされる痛ましい事件は、日本社会に衝撃を与えています。日本語学校に通い、将来はアニメ関連の仕事に就くことを夢見ていた若者の命がなぜ絶たれてしまったのか。バダルさんの兄の証言から、二人の出会いから事件直前の“異変”まで、悲劇に至る経緯を詳報します。

悲劇の舞台:船橋市内のホテルで起きた事件

千葉県警は10月28日、千葉市稲毛区に住むアルバイトの浅香真美容疑者を殺人容疑で再逮捕したと発表しました。浅香容疑者は10月5日午前4時35分から8時15分ごろまでの間に、船橋市内のホテルで、交際相手だったチャンタール・バダルさんの胸などを包丁で刺し、殺害した疑いが持たれています。

事件は、浅香容疑者自身が119番に通報し、「バダルさんが自分でナイフで刺した」と伝えたことで発覚しました。しかし、発見されたバダルさんの遺体はうつ伏せに倒れ、左胸には心臓と肝臓を貫通する深い刺し傷がありました。遺体の損傷が激しかったことから、県警は浅香容疑者が強い殺意を持って犯行に及んだとみて、現在も捜査を進めています。

日本への夢、そして出会い

バダルさんは来日後、日本語学校に通いながら、日本の専門学校への進学を計画していました。特に『ワンピース』や『鬼滅の刃』といった日本のマンガやアニメをこよなく愛し、「いつかアニメ関連の職に就きたい」という大きな夢を抱いていました。彼のノートには、日本語の漢字練習が何度も記されており、その真剣な学びの姿勢がうかがえます。

浅香容疑者とバダルさんが出会ったのは、バダルさんの弟が学費を稼ぐために働いていた工場でした。その後、バダルさん本人も同じ工場でアルバイトを始め、そこで浅香容疑者と接点を持ったとされています。バダルさんの兄も同じ工場で働いていましたが、浅香容疑者とはほとんど面識がなく、知人からは「背が低くておとなしい印象だった」と伝え聞いただけでした。二人がいつから交際を始めたのかは明確ではありませんが、今年8月には花火大会に一緒に行くなど、仲睦まじい様子が見られていたといいます。

刺殺されたネパール人チャンタール・バダルさん(21)。日本の専門学校への進学を夢見ていた刺殺されたネパール人チャンタール・バダルさん(21)。日本の専門学校への進学を夢見ていた

兄が語る“異変”:事件直前の行動変化

平穏に見えた二人の関係でしたが、事件が起こる少し前に、バダルさんの兄は“異変”を感じていたと語ります。事件までの約1か月間、バダルさんは毎週土曜日の夜を船橋市内のホテルで浅香容疑者と過ごしていました。居酒屋でのアルバイトが終わるとそのまま彼女に会いに行き、ホテルに泊まって、翌日は自宅に寄らずに直接次のアルバイト先に向かう、というパターンが続いていたのです。

そして事件直前の10月2日、ネパールのお祭り「ダサイン」を祝うために兄弟二人で過ごしていた際、バダルさんは兄に「悩み相談」を打ち明けていたといいます。この相談の内容が何だったのか、そしてそれが今回の悲劇とどのように繋がるのかは、今後の捜査で明らかになるかもしれません。前途ある若者の人生を奪ったこの事件の全容解明が待たれます。

参考文献