宇都見刑事が犯人?
考察で人気を博している日本テレビのドラマ「良いこと悪いこと」(土曜午後9時)が終盤に入る。これまでに34歳の男女3人が殺された。主人公の高木将(間宮祥太朗)、猿橋園子(新木優子)の鷹里小6年時の同級生である。元担任教師の大谷典代(赤間麻里子)も殺害された。主犯はあの人物しかいないと読む。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】
【写真】「この人怪しい」「悪い顔だ~」…“真犯人”は誰? 盛り上がる考察合戦
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これまでにドラマから与えられた数々のヒントと、「ノックスの十戒」に基づき、主犯を推理したい。この十戒は1928年に英国の名推理作家だったロナルド・ノックスが提唱した。ミステリーの基本ルールである。
まず捜査1課刑事の宇都見啓(木村昴)はシロである。連続殺人が起こる前から、塗装業の高木が常連であるレトロスナック「イマクニ」に通い、職業を尋ねられると「しがない公務員です」と答えた。
だから怪しまれたが、勤務時間外に身分を隠すのは警察官の常識。怪しい人物が近づいて来るのを未然に防ぐためである。警視庁本庁は勤務時間外には「本店」と呼ぶ。各警察署は「支店」。これも理由は同じである。
宇都見は第5回、上司の宮園(戸田昌宏)にこの件を連続殺人として捜査させてほしいと頼んだ。宇都見が犯行に加担していたら、自殺行為である。
この時点で薬剤師・武田敏生(水川かたまり)、ホステス・中島笑美(松井玲奈)、居酒屋店主・桜井幹太(工藤阿須加)の3人が死んでいた。武田と中島は既に事故死で処理されていたから、警察上層部は連続殺人としては動きたがらなかった。
ノックスの十戒はその7で「探偵自身が犯人であってはならない」と定めている。それが許されたら、何でもできてしまい、ミステリーではなくなってしまうからだ。このドラマの場合、高木と「週刊アポロ」記者の猿橋も探偵役。万一、2人のどちらかが犯人だったら、視聴者の多くはあきれるはずである。
歌のとおりに人が死んでいくところが、このドラマとアガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」(1939年)は共通する。アガサの作品は連続殺人で10人が死んだ。犯人は途中で殺されたはずの元裁判官だった。自分の死を偽装した。
このドラマも火を放たれて死んだ桜井に疑惑の目が向けられた。「本当は生きているのではないか」と。桜井には不審な点もある。だが、死んだのは間違いない、
第1回で桜井の居酒屋は火事になる。桜井は意識不明の状態で病院に収容された。面会謝絶。心配して訪れた高木も会えなかった。米国でアプリとゲームの開発会社を経営する小山隆弘(森本慎太郎)もやって来たが、同じ。






