物議を醸す「お米券」配布計画:交野市長が効率性の低さを批判

政府が閣議決定した約21兆円規模の総合経済対策の目玉の一つとして、「お米券」の配布がクローズアップされています。米価の高騰が続く中、家計の負担軽減を目指すこの政策に対し、地方自治体からは疑問の声が上がっています。特に大阪府交野市の山本景市長は、X(旧Twitter)上で「交野市はお米券を配布しません」「露骨なお米券への誘導には屈しません」と強く反発し、大きな波紋を呼んでいます。本記事では、この「お米券」配布を巡る政府と地方の意見の相違、そして山本市長が指摘する政策の非効率性について深掘りします。

「お米券」配布を巡る政府の動きと地方の反発

11月21日に政府が閣議決定した総合経済対策には、地方自治体が自由に活用できる「重点支援地方交付金」として2兆円が計上されました。この交付金の具体的な活用例として、「食料品の物価高騰に対する特別加算」の中で「いわゆるお米券」が挙げられており、政府がお米券の配布を強く推奨していることが伺えます。鈴木憲和農水相もこの政策を一押しとしていますが、地方からはその実務における課題が指摘されています。

米価高騰対策の「お米券」を推進する鈴木憲和農水相米価高騰対策の「お米券」を推進する鈴木憲和農水相

そうした中、山本景・交野市長は、政府の誘導に異議を唱え、「交野市としてお米券は絶対に配らない」とXで発信しました。この市長の言葉は、単なる政策批判に留まらず、地方自治の独立性と効率的な住民支援への強い意志を示すものとして注目されています。

交野市長が指摘する「お米券」の非効率性

山本市長が「お米券」の配布に反対する主な理由は、その極めて低い効率性にあります。現在流通している「おこめ券」(全国米穀販売事業協同組合発行)と「おこめギフト券」(JA全農発行)は、いずれも1枚500円で440円分の米が購入できる仕組みです。この差額60円は、券の印刷代、流通経費、マージンなどに充てられ、この段階で既に12%の経費率が発生します。

さらに、これらの券を住民に郵送するためには、名簿作成や切手貼付といった作業が必要となり、多くの場合、業者への委託が発生します。これにより、総経費率は20%程度まで上昇し、住民が実際に受けられる恩恵は、投じられる費用の8割程度にまで目減りしてしまうと市長は指摘します。過去に配布された「プレミアム商品券」も同様に、約20%の経費がかかっていたとされています。

「お米券」配布に異議を唱える交野市の山本景市長「お米券」配布に異議を唱える交野市の山本景市長

より効率的な住民支援策とは?

山本市長は、効率的な住民支援策として複数の方法を比較しています。例えば、住民の銀行口座へ現金を直接振り込む方法でも、経費率は約10%程度かかるとされますが、券の配布よりは抑えられます。

しかし、最も効率的な方法として市長が挙げるのは、水道料金や下水道料金の基本料金を一定期間免除することです。市町村はこれらの料金を徴収しており、既存のシステムを改修するだけで実施できるため、経費率はわずか1%程度に抑えられるというのです。この方法であれば、費用の大半が直接住民の負担軽減につながり、交付金が最大限に活用されると山本市長は強く主張しています。

結論

政府の物価高騰対策として打ち出された「お米券」配布は、その意図とは裏腹に、地方自治体からは効率性の観点から強い疑問の声が上がっています。交野市の山本景市長の具体的な試算は、政策実施におけるコスト効率の重要性を浮き彫りにしています。住民の生活を真に支えるためには、形式的な支援ではなく、実質的な恩恵が最大限に行き渡るような、より効率的で実用的な政策選択が求められていると言えるでしょう。この議論は、今後の地方自治体の裁量と政府の政策立案に大きな影響を与える可能性があります。