維新・遠藤敬国対委員長に「秘書給与還流」疑惑が浮上か – 元秘書が証言

自由民主党と日本維新の会が衆議院議員の定数削減で合意に至る中、「身を切る改革」を掲げる維新内部から、同党の国対委員長を務め、首相補佐官として政権幹部入りした遠藤敬氏に関する「秘書給与ピンハネ」疑惑が浮上し、波紋を広げています。これは、国が公設秘書に支給した給与が代議士へと還流していたという重大な問題であり、元秘書の具体的な証言によってその実態が明らかになりつつあります。この疑惑は、公費の適切な運用と政治資金の透明性に対する国民の信頼を揺るがしかねないものとして注目されています。

「寄附をせなあかんの?」─ 遠藤敬氏への疑惑浮上

遠藤敬氏は、自民党と維新の連立交渉を主導し、高市早苗・首相から「連立合意政策」担当の首相補佐官に起用された、連立政権における重要人物です。しかし、週刊ポスト本誌の取材に対し、遠藤氏の元公設秘書であるA氏が、政治資金収支報告書に記載された寄附について言及し、疑惑の存在を裏付ける証言を行いました。A氏は、自身以外にも複数の秘書が報告書に名前が挙がっていることを指摘しており、これが組織的な関与を示唆しています。

遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)

政治資金収支報告書から見る公金還流の実態

本誌が遠藤氏が代表を務める「日本維新の会衆議院大阪府第18選挙区支部」の政治資金収支報告書を調査したところ、驚くべき事実が判明しました。2019年から2022年、そして2024年の5年間で、遠藤氏は国の給与が支給される公設秘書3名から、総額796万547円もの寄附を受け取っていたのです。これは、税金が原資である公設秘書の給与が、巡り巡って国会議員に還流していたことを意味します。A氏は、遠藤氏の公設第一秘書や第二秘書を務めていた時期に、合計221万6005円を寄附していたと証言しています。

A氏は寄附の経緯について、「(寄附を)せなあかんの?」という形で受け入れていたと明かしました。遠藤氏本人から直接言われたわけではないものの、「ある人から言われたら、『はいはい』と言わんとしゃあないですよね」と語り、事実上の強制があった可能性を示唆しています。A氏はまた、寄附の金額を見た妻に驚かれたエピソードを明かしつつも、「(遠藤氏に)拾ってもらった」という思いや、遠藤氏の「情が厚い人間」という印象から、現在でも応援している複雑な心境を吐露しています。

国会議員秘書給与法と法的な問題点

国会議員が公設秘書から税金が原資の給料を「上納」させ、ピンハネする行為は、2004年の国会議員秘書給与法改正によって厳しく禁止されています。同法第二十一条の三では、「何人も、議員秘書に対して、当該国会議員がその役職員又は構成員である政党その他の政治団体又はその支部に対する寄附を勧誘し、又は要求してはならない」と明記されています。この規定は、秘書の経済的独立性を守り、政治資金の不透明な流れを断ち切ることを目的としています。

政治資金問題に詳しい神戸学院大学の上脇博之教授は、この法条文について、「『勧誘』や『要求』という行為を禁じているのであり、公設秘書が自発的に寄附を行うことは禁じていない」と解説しています。しかし、仮に自発的な寄附に見えても、それが勧誘によって行われていた場合は違法となると指摘。さらに、「何人も」という条文の文言から、議員本人だけでなく、先輩秘書や事務所関係者からの勧誘や要求も違法行為に該当する可能性があるとし、議員が秘書に指示して他の秘書に寄附を勧誘させた場合、議員が共犯になる可能性も示唆しています。この疑惑の全容解明と、法的な責任の所在が今後の焦点となるでしょう。