世間を沸かしたバツ3の叶井俊太郎氏との結婚から14年と半年。漫画家・くらたまに降りかかったのは、夫の死と、残りの人生をどう独りで生きるかという「新たな人生設計」だった――。
夫亡き後の日々の暮らしや感じたこと、そして新たな挑戦の日々を漫画とエッセイでお届けする(漫画はエッセイの最後に)。【連載第10回】
■「ミカ姉」の移住願望
五十路を過ぎてから出会った同い年の友だち、ミカンは都内在住の専業主婦です。
「自然に囲まれた暮らしがしたいんよ」
広島生まれ、広島育ちの彼女は、瀬戸内の海の近くに住みたいと折に触れ話していました。
家は新宿から徒歩圏内の便利な場所にあり、子どもはいないけどダンナさんは今も現役で働いているミカン。お酒が大好きで、毎日のように飲み歩き、近所では「ミカ姉」と呼ばれて人気者の彼女は、日々の生活を充分に楽しんでいるように見えました。
違う場所に移る必然性はどこにもなく、私やミカン周辺の友人は皆、彼女の移住願望を本気には捉えていませんでした。
そんな彼女が昨年、都内で開催された移住フェアで東広島移住体験ツアーに申し込みをし、瀬戸内海の小さな島で数日間を過ごしました。
島の特産物であるみかんやレモンの収穫体験をし、古民家を見て回り、すぐそばに海や緑があるという環境を味わって帰京してきたミカンは、興奮気味に「やっぱり自然の中で暮らすって最高! 移住したい気持ちが高まった」と話していました。
そして今年、縁あって出会った人からなんと電気・ガス・水道代だけで家を借りられることになり、
「とりあえず、住んでみることにした」
と、この冬、島に渡っていきました。
佐木島(さぎしま)という名のその小さな島は、広島県三原市にあります。新幹線こだまが停まる三原駅から程近い三原港から、高速船で15分ほど。都会からのアクセスに非常に便利な島です。
都内で夫婦2人暮らしだったミカンが、一転、離島の古民家で1人暮らしへ。
正直なところ、ミカンのダンナさんの理解を得られるとも、好条件で簡単に家が見つかるとも思っていなかったので、ミカンが移住実現への一歩を確実に歩み出したことは意外で、驚きでもありました。






