受験生のバイブルとも言える三田紀房氏の人気漫画『ドラゴン桜2』は、単なる受験テクニックにとどまらない、本質的な学びの姿勢と教育論を深く掘り下げています。現役東大生である土田淳真氏(文科二類)による連載「ドラゴン桜2で学ぶホンネの教育論」の第113回では、「勉強に挑む姿勢」に焦点を当て、合格への道のりにおける心構えの重要性を考察しています。この記事では、土田氏の分析に基づき、どのようにして困難な目標に立ち向かい、真の学びに繋げるべきかを探ります。
桜木建二が説く「雨乞い理論」:成功への絶対的条件
東京大学受験への自信を失いかけていた天野晃一郎に対し、東大合格請負人である桜木建二は、一見不合理な「叩いてかぶってジャンケンポン」の勝負を仕掛けます。15連敗の末にようやく1勝をもぎ取った天野に、桜木が伝えたのは「合格するまで勉強する」というシンプルな、しかし絶対的な合格の秘訣でした。
これは、古くから語り継がれる「雨乞い理論」と深く通じ合います。「絶対に成功する雨乞いとは、雨が降るまで祈り続けることだ」というこの考えは、一見すると精神論のように聞こえますが、多くの成功者が同様の哲学を抱いています。例えば、「経営の神様」と称された松下幸之助は、「成功するまで続けたならば失敗というものはない」という旨の言葉を残したとされ、目標達成における継続の力を強調しています。
ドラゴン桜2の表紙イラスト:三田紀房/コルク
成功の鍵は「挑み方」:巨人の肩に乗る重要性
しかし、単なる継続だけが成功に繋がるわけではありません。土田氏は、成功者の言葉を「勝者のポジショントーク」としながらも、「続け方」と「挑み方」の重要性を指摘します。自分が挑戦すべき領域と現在の立ち位置を正しく見極め、先人たちの知恵を借りる、いわゆる「巨人の肩に乗る」という姿勢が不可欠です。これは口で言うほど簡単ではなく、実践には深い洞察力が求められます。
高校時代に数学の教師から聞かされた「一人の数学の天才が独学で研究に没頭した結果、画期的な数式を生み出したと思いきや、それは中学3年生で習う二次方程式の解の公式だった」という話は、この点を象徴しています。この逸話の真偽はともかく、いかに卓越した思考力を持っていても、既存の学識を学び、その道を辿ることで、大幅な時間短縮と効率化が図れることを示しています。
「車輪の再発明」の罠と、あえて苦悩する価値
これは「車輪の再発明」と呼ばれる現象です。既に解決されている単純な問題を、無駄な労力をかけて一から作り直す皮肉を指します。さらに悪い場合は、「四角い車輪の再発明」となり、再発明した挙句に役立たないものを作ってしまうことにもなりかねません。
もちろん、「車輪の再発明」が全て否定されるわけではありません。大学までの学習のほとんどは、既知の知識や理論をなぞることに他なりません。しかし、土田氏は「悩み抜いて解くこと」にこそ意味があると語ります。彼が小学3年生の時に経験した、「1/3−1/4」と「1/3×1/4」が同じ答えになることに気づき、文字を使ってその法則を「証明」した時の快感は忘れられないと言います。
これは、何を目的としているのかという点に行き着きます。単なる思索の結果として、あるいは自身が納得するために先人のプロセスを追体験することは、何の問題もありません。むしろ、その過程こそが真の学びと深い理解に繋がるのです。しかし、効率性や純粋な利益を追求する場合には、一から考えることは得策とは言えません。
受験における「目的」の問い:効率か、真理の追求か
では、受験勉強においてはどうでしょうか。これを究極の効率性を追求する「ゲーム」として捉えるのか、それとも真理を探究する「学問のプロセス」として位置付けるのか。多くの場合はその中間、やや効率性に重きを置くことになるでしょう。しかし、あえて異なるアプローチを取ってみることで、思わぬ面白い発見が得られるかもしれません。
最終的に、受験における「勉強の姿勢」とは、単に努力を継続するだけでなく、既存の知識を最大限に活用し、時には自ら深く考察するバランス感覚が求められると言えるでしょう。この姿勢こそが、単なる合格に留まらない、人生における真の学びへと繋がっていく鍵となるのです。
Source link: https://news.yahoo.co.jp/articles/ac102d073ba9f5d921587f7116f257e257c63d5c





