日本のタワマン市場に迫る転換点:中国マネーの減退と金利上昇が引き起こす変化

12月19日、日本銀行が30年ぶりの水準となる0.75%への金利引き上げを発表したことは、日本の住宅市場に大きな波紋を広げている。これにより住宅ローンの金利も上昇し、仮に4000万円を30年ローンで借り入れた場合、月々の返済額が約2万円増える計算になるなど、購入を検討している層にとっては厳しい現実を突きつけている。この金利上昇に加え、これまで市場を牽引してきた中国マネーの流れに異変が生じており、日本のタワーマンション(タワマン)市場は今、かつてない転換点に直面している可能性がある。

不動産市場に現れた異変:高騰と取引鈍化

日本の首都圏都心エリアでは、2013年以降マンション価格の高騰が続き、特にここ2~3年はその傾向が顕著だ。東京湾岸エリアでは、新築販売価格の2倍もの価格で中古物件が売り出されるケースも珍しくない。象徴的な例としては、東京オリンピック選手村跡地に開発された晴海フラッグの物件が挙げられる。新築時に1億円程度で販売された住戸が、現在では2億円以上で売り出されている状況だ。

日本のタワーマンション群と、市場の先行きを示すような都市の風景日本のタワーマンション群と、市場の先行きを示すような都市の風景

しかし、これらの高値で実際に取引が成立しているかというと、話は別である。つい数か月前までは散発的に買い手が付いていたものの、現在は大幅に減少しているという。その一方で、市場には売り物件の在庫が積み上がり始めており、市場全体の動きは急速に鈍化しているのが実情だ。この現象は、これまでの過熱感が一服し、需要と供給のバランスが変化しつつあることを示唆している。

海外投資家の動向:見え隠れする中国マネーの真実

マンション市場の動向を読み解く上で、海外居住者による取得割合は重要な指標となる。先日、国土交通省は都心6区における新築マンションの海外居住者による取得割合が7.5%であることを公表した。その内訳をブルームバーグが報じたところによると、2025年1月から6月の期間に登記された国・地域では、台湾が192件で最多、次いで中国が30件であったという。

この数字だけを見ると、台湾からの投資が主体であるかのように見えるかもしれない。しかし、これは表面的な現象に過ぎない可能性が高い。中国政府は10年以上前から厳しい外貨持ち出し制限を設けており、一人当たりの年間上限は5万ドルに設定されている。この金額では、日本のマンション購入の頭金にすら充当できないのが現実だ。

そのため、中国の富裕層は様々な「抜け道」を利用して海外に資金を流出させている。日本でのマンション購入もその一環であり、彼らにとって日本にマンションを保有している事実は、中国当局に知られたくない「不都合な真実」となることが多い。このため、自身の個人名義での登記を避ける傾向がある。例えば、かつては資本金500万円で日本に法人を設立することで「経営・管理」ビザが取得可能であり、その法人名義でマンションを購入すれば、中国当局からの追跡を難しくすることができた。さらに確実な隠蔽を望む場合は、タックスヘイブンに法人を設立し、その名義で登記を行うことで、国土交通省からは「海外」であっても中国からの投資とは認識されにくくなるのだ。

中国政府の政策転換が日本のタワマン需要に与える影響

しかし、このような中国人のマンション取得動向は今後、大幅に減少する可能性が高い。その主な原因は、中国政府の政策転換にある。すでに出されている訪日自粛令により、少なくとも公務員や国営企業の社員は日本への渡航が困難になっている。これまで日本の高額マンションを購入してきた中国人富裕層の中には、その地位を利用して得た資金を海外へ逃避させる目的を持つケースも多かったが、こうした動きは間違いなく萎縮するだろう。

さらに、中国政府は近年、個人資産への監視を強化しており、海外への資金逃避を可能にしていた「抜け道」も早晩、塞がれてしまうと見られている。これは、日本のタワマン市場の大きな需要源の一つが消滅する可能性を示唆している。

結論

日本銀行の金利引き上げと中国政府による海外資金流出規制の強化は、日本のタワーマンション市場にとって無視できない大きな変化をもたらすだろう。これまで市場を牽引してきた中国マネーの流入が細り、住宅ローン金利の上昇が買い手の購買意欲を冷やす中で、首都圏のマンション市場は価格高騰の一服、あるいは調整局面を迎える可能性がある。今後の市場の動向は、国内外の経済・政治情勢に一層左右されることとなるだろう。

Source: Yahoo!ニュース (via 週刊プレイボーイ), Bloomberg, 国土交通省