宇宙でこれまで理論上のみ存在するとされてきた「スーパーキロノバ」と呼ばれる現象が、初めて観測された可能性が報告されました。この特異な宇宙現象は、大質量星の最期に起こる「超新星」と、高密度の中性子星連星の衝突・合体によって引き起こされる「キロノバ」という、連続する2つの爆発が関係していると考えられています。2025年12月に天文学誌『The Astrophysical Journal Letters』に掲載された研究では、2025年8月に複数の望遠鏡で検出された現象「AT2025ulz」の詳細な分析が行われています。
中性子星合体によるスーパーキロノバの想像図 (Caltech/K. Miller and R. Hurt (IPAC))
超新星とキロノバ:宇宙の元素合成工場
超新星とキロノバは、宇宙における重要な天体現象であり、恒星の材料や重元素を銀河全体に拡散させる役割を担っています。超新星は、星が一生の最期に大爆発を起こし、突如として明るく輝く現象です。これには主に2つのタイプがあり、1つは大質量星が核融合燃料を使い果たして中心核が崩壊する爆発、もう1つは星の表面に物質が蓄積し核融合が暴走する爆発です。超新星爆発で発生する衝撃波により、炭素や鉄といった比較的軽い元素が合成され、宇宙空間にばら撒かれます。
一方、キロノバは、超新星爆発後に残される高密度天体である2つの中性子星が衝突・合体することで発生します。この強力な爆発は、金やウランなどの重元素を合成するプロセスとして知られており、さらには地球上の検出器で捉えることが可能な重力波を発生させます。
重力波が捉えた「AT2025ulz」の謎
「AT2025ulz」の検出は、2025年8月18日に米国の重力波検出器LIGOとイタリアの検出器Virgoが重力波信号を捉えたことから始まりました。この重力波データは、2つの天体が合体したこと、そして少なくともその一方の天体が異常に小さいことを示唆していました。この信号を受けて、米カリフォルニア州のパロマー天文台にあるツビッキー突発現象観測施設(ZTF)や、米ハワイ島のW・M・ケック天文台などの光学望遠鏡が観測を行いました。
その結果、約13億光年離れた場所で、急速に減光する赤色天体としてキロノバが検出され、その数日後には超新星が観測されました。この一連の現象は、これまで理論上でのみ語られてきた「超新星に続いてすぐにキロノバが起きる」というスーパーキロノバの仮説と一致しており、宇宙における重元素の起源や天体進化の理解を深める上で極めて重要な発見となる可能性があります。





