高市早苗政権の「通信簿」:なぜ高支持率を維持し、その死角はどこにあるのか

年が明けてもなお高支持率を維持する高市早苗政権に対し、その人気の理由と潜在的な弱点について多角的な評価がなされています。文芸批評家の浜崎洋介氏、作家の鈴木涼美氏、著述家・翻訳家のマライ・メントライン氏、そして共同通信特別編集委員の久江雅彦氏の4名が「文藝春秋」2月号の座談会に集い、日本初の女性宰相である高市首相の“1学期”を徹底分析しました。本記事では、この識者による議論から、高市政権の真髄に迫ります。

若年層に刺さる「キャラ」:高市首相を「推し活」するZ世代

マライ・メントライン氏によると、現代の10代、20代の若年層は、政治家を「キャラ化」して捉える傾向が強いといいます。彼らにとって高市首相は、「よくわからない政治の裏側をぶっ壊す人」という際立ったキャラクターとして認識されています。この明確なキャラ設定が、若者層からの「推し活」の対象となっていると分析しています。マライ氏は、ドイツの「ドイツのための選択肢(AfD)」や「BSW」といったポピュリズム政党が、既存政治にうんざりする若者から支持を集めている現象との類似性を指摘し、反グローバリズムや反高齢者政策を掲げるこれらの政党が、若者にとって「全てを変える」存在として魅力的に映ると述べています。

高支持率を維持する高市早苗首相高支持率を維持する高市早苗首相

「空気を読まない」姿勢が既存政治の壁を破る

高市政権を支持する立場を取る浜崎洋介氏は、高市首相のパーソナリティについて「空気を読まない、あるいは読めない人」と評しています。党内の力学や周囲との関係性よりも、自身の信念を優先するこの姿勢が、長らく男性中心の「おじさんたちによる既存政治の空気」を打ち破る原動力となっていると分析。この特徴は、欧州各国でリーダーシップを発揮する女性政治家にも共通して見られる現象ではないかと指摘しています。

懸念される「台湾有事」に関する発言の波紋

一方、鈴木涼美氏は、高市首相が「勉強熱心さを貫き、おじさんたちの行間読み合戦や根回し合戦の外にいる」点には一定の応援したい側面があるとしながらも、その結果として「つい言ってしまったように見える台湾有事についての失言」には懸念を示しています。この発言が日中間の文化的な交流を停滞させる可能性を指摘し、撤回を強く希望しています。外交上の微妙なバランスが求められる国際問題において、不用意な発言がもたらす影響の大きさを浮き彫りにしています。

「自己流答弁」が孕む落とし穴

長年政治取材を続けてきた久江雅彦氏は、高市首相の「空気を読まない」性格が改革者としての良いイメージに繋がる一方で、大きな落とし穴を孕んでいると警鐘を鳴らしています。久江氏の知る限り、高市首相が第二次安倍政権下で総務大臣を務めた際、官僚との国会答弁に関する打ち合わせ(レク)をほとんど受けなかったのは異例中の異例だといいます。高市首相は持ち前の勉強熱心さで、提示された資料を自己流で咀嚼し、独自の答弁を作成する傾向があるとのこと。これは答弁の分かりやすさには繋がるものの、通常であれば回避できるような「大きな穴」に落ちる危険性を伴うと指摘しています。

現在、首相官邸や自民党内では、「勉強熱心で一生懸命」という高市首相の姿勢をむしろ売りにしていく動きがあるといいます。これは、従来の自民党政治に見られた「妥協」「調整」「腹芸」といった古い政治手法とは対極にあるアプローチであり、今後の政権運営においてどのような結果をもたらすのか注目されます。

多角的な視点で高市政権を読み解く

「文藝春秋」2026年2月号に掲載される座談会「高市早苗首相の通信簿」では、本記事で紹介した内容に加え、「働いて×5」発言に象徴される高市首相の本質、ドイツのメルケル元首相やイタリアのメローニ首相、イギリスのトラス元首相など海外の女性首相との比較、ドナルド・トランプ元米大統領との「キャピキャピ対応」は正解だったのか、奈良のシカに関する発言に見られる外国人政策への視点など、4人の識者が高市政権を巡る多岐にわたるテーマについて活発な議論を繰り広げています。詳細については、ぜひ「文藝春秋」2026年2月号、または月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」をご覧ください。