【主張】韓国大統領 対日改善の意思ないのか


 安倍晋三首相と文在寅韓国大統領が訪問先の中国・成都で会談した。

 約1年3カ月ぶりの正式会談だったが、冷え込んだ両国関係修復に向けた具体的な前進はなかった。その責任は、文大統領の側にある。

 両首脳は、日韓間の問題解決のために外交当局の協議を続けることを確認した。しかし、その見通しは明るくない。

 安倍首相は最大の障害となっている「徴用工」判決問題について、韓国側の責任で解決策を示すよう促したが、文大統領は応じなかった。文大統領は、安全保障に絡む日本の対韓輸出管理の厳格化の撤回を求めた。

 文大統領には対日関係改善の意思があるのか。極めて疑わしい。日本が国交の基盤である日韓請求権協定の違反状態を受け入れたり、韓国側の改善なしに兵器転用の恐れがある輸出品の管理を緩めたりできるわけもない。

 安倍首相が日本の原則的立場を守ったのは当然である。

 首脳会談に先立ち、康京和韓国外相は茂木敏充外相との会談で、「徴用工」問題をめぐる文喜相韓国国会議長の案に言及した。両国企業などから寄付を募り、「慰謝料」を支給する案だ。

 韓国最高裁の「徴用工」判決は企業活動だけでなく日本の朝鮮統治自体を「不法」と断じ、個人請求権を認めた。請求権協定に反する判決で、日本断罪の道具として理不尽な賠償訴訟の続出を招きかねない。

 議長案は、この判決の根本問題を解決しない。議長案には韓国内でも反発が強く「徴用工」問題自体も解消できない。

 文議長は、案の実施に当たって首脳宣言による「日本の真の謝罪」も求めている。いわれのない謝罪や寄付を強いる議長案に絶対に応じてはならない。茂木外相は「コメントできない」と伝えたが、一蹴すべきだった。

 文政権とは人権問題で温度差もある。中国は、文大統領が習近平国家主席との会談で「香港や新疆(ウイグル自治区)の問題は中国の内政だ」と語ったと発表し、韓国は中国側発表のトーンが強すぎると釈明した。

 いずれにせよ、文大統領は、中国の深刻な人権状況に問題提起しなかった。日本が、価値観を共有できない国と真に連携することは難しい。



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