韓国憲法裁、訴え却下も日韓合意の履行義務を骨抜きに





韓国の憲法裁判所=27日、ソウル(共同)

 【ソウル=桜井紀雄】韓国の憲法裁判所は27日、慰安婦問題をめぐる2015年12月の日韓合意について、元慰安婦らが憲法違反だと認めるよう求めた訴訟で、裁判官の全員一致で訴えを却下した。合意は、条約締結の手続きを踏んでいない「政治的な合意」にすぎず、元慰安婦らの法的権利が消滅したともいえないため、憲法裁の審判対象ではないと判断した。

 日韓合意では、日本政府が10億円を拠出するなどし、問題の「最終的かつ不可逆的な解決」をうたった。だが、憲法裁は、合意で「具体的な権利・義務が生じたとは認められない」と判断。根本的に慰安婦問題とは何なのかについて、日韓間で「共通の認識が存在しない」とも指摘した。

 日本政府が韓国政府に求めてきた合意履行の義務を骨抜きにするような判断といえ、最高裁によるいわゆる徴用工判決で悪化した日韓関係にさらなるマイナス影響を与える可能性がある。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は、日本からの10億円で設立した基金を解散させ、合意を事実上白紙化している。

 憲法裁は、合意が元慰安婦らの「賠償請求権など、基本権を侵害する可能性があるとはみづらい」との判断も示した。これを受け、元慰安婦支援団体などが日本に法的責任を求める動きを一層強める恐れもある。

 元慰安婦や遺族は16年3月、合意で日本側に賠償を求められなくなり、財産権や尊厳、国からの外交的保護を受ける権利を侵害されたとして訴えていた。

 憲法裁は、憲法違反などを審査する司法機関。



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