自転車競技に欠かせないヘルメット。万一の事故時に選手の頭部を守る一方で、快適性や空力特性が競技成績に直結する重要なアイテムだ。日本で唯一、自転車競技用ヘルメットを製造販売しているオージーケーカブト(大阪府東大阪市)は、これまで15年以上にわたり日本代表選手たちに製品を供給してきた。
現在、東京五輪での採用を目指す新製品の開発が追い込み段階だ。ロードレースに向けては、五輪コースの発表直後に開発陣が視察し、何度も現れる上り坂が勝負どころだと確認。勝利に貢献するため、開発の狙いを「通気性」と「快適性」の向上に定めた。
こうして設計された「IZANAGI(イザナギ)」(今春発売予定)は、特殊な補強部材と構造を採用して側頭部にも大きな通気口を設け、熱を放出しやすくした。また頭を包み込むような内部構造や、汗をかいても不快さを感じにくい素材を採用。ロードレースやマウンテンバイク(MTB)の長時間のレースで快適さを高め、選手の成績向上をアシストする構えだ。
製品開発課の吉田健係長は「日本の夏の暑さを知る地の利を、この製品に生かしている」と胸を張る。
一方、高速で100分の1秒を競うトラック競技用は、空気抵抗の軽減を徹底追求。自社の風洞実験施設で「重箱の隅をつつくような改良を重ねている」(吉田氏)という。
オージーケーカブトは、昭和23年創業の自転車部品メーカー「大阪グリップ化工」(現OGK技研、東大阪市)を母体とし、58年にヘルメットの事業部が「オージーケー販売」として独立。平成18年に現在の社名に変更した。社員約90人ながら、自転車競技用ヘルメットの国内市場シェアは海外ブランドを抑えてナンバーワン。オートバイ用ヘルメットでもトップブランドの一角を占める。
木村秀仁社長は、品質とともに「心の質」を社是に掲げる。安全性と快適性、ファッション性などを兼ね備えたヘルメットの実現へ、妥協はしない。東京五輪に向けては、「選手は勝つことがモットー。われわれは安全を最優先し、なおかつ勝利を求める」と意気込んでいる。