石綿規制強化 解体工事増で使用全建物対象に 国会提出の改正案判明


 政府が建物解体時におけるアスベスト(石綿)対策強化のため、20日召集予定の通常国会に提出する大気汚染防止法改正案の概要が3日、分かった。規制対象を広げ、石綿が使われた全ての建物の解体・改修時に飛散防止対策を義務付ける。老朽化した建築物の解体工事件数が令和10年ごろにピークを迎えるとされるのを踏まえ、安全対策の実効性を高める狙いがある。

 現在は石綿が表面に吹き付けられた建材や、石綿を含む断熱材など飛散リスクが高い建材を取り壊す際に限り、作業場の隔離や排気装置の設置を義務付けている。

 ただ、環境省の実態調査で石綿が練り込まれた建材の解体作業でも石綿が飛散する事例が確認されたことから、改正案では規制対象を拡大する。住宅や病院などの建物で天井や壁の内装材として使われているスレート板などの建材の解体・改修工事を新たに対象とし、施工者に事前調査なども義務付ける。

 また、元請け業者に対し、工事の施工前に石綿が使用されているかを調べ、調査記録の保存を義務化する。工事現場を事前に幅広く把握して石綿建材の見落としを防ぐため、一定規模の建物を解体する際は石綿を含む建材の有無にかかわらず、都道府県に調査結果の届け出を求める。

 隔離や排気装置を設置せずに石綿建材の撤去を行った者に対する罰則も設ける。元請け業者に加え、下請け業者にも作業基準の順守義務を適用する。

 石綿は耐火性に優れ、工場や住宅などで広く使われてきたが、飛散した細い繊維を吸い込むと中皮腫や肺がんを引き起こす恐れがある。国際労働機関(ILO)などが1972(昭和47)年に発がん性を認め、日本では平成18年に使用が禁止された。



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