【パリ=三井美奈】イランが報復攻撃を実施するなど米国との対立を深める中、欧州は両国のはざまで手詰まり状態にある。英独仏の主要3カ国は「外交による危機解決」と「イラン核合意順守」を目指してきたが、双方の仲介役は果たせないままだ。
仏大統領府は報復攻撃に先立つ7日、マクロン大統領がイランのロウハニ大統領と電話会談し、事態悪化を招くような行為を自制し、核合意を順守するよう求めたと発表した。
声明は、マクロン氏が「イラクで最近起きたことへの深い懸念」を表明したとする一方、米軍がイラクでイラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官を殺害したことには直接言及しなかった。ジョンソン英首相は7日、トルコのエルドアン大統領と電話会談し、核合意維持の立場を確認した。
イラン危機は、昨年12月に発足した欧州連合(EU)新体制にとり、危機対応で最初の試練になった。
だが、手詰まり感は否めない。英独仏、イタリアの4カ国外相は7日、ブリュッセルで会合を開いた。マース独外相は、核合意を放棄して無制限にウラン濃縮を行うと表明したイランに対し、「欧州は協調対応をとるべきだ」と主張したが、仏政府の発表によると、会議は中露と連携し、合意維持に努力すると確認するにとどまった。
ソレイマニ司令官の殺害後、米欧同盟は溝の深さを浮き彫りにした。ポンペオ米国務長官は3日、米FOXニュースで「欧州はわれわれが期待するような助けになっていない。英独仏は、我々の行動で欧州も救われたことを理解すべきだ」と批判した。
これを受け、英独仏3カ国首脳は5日になって共同声明を出し、ソレイマニ司令官が中東で「否定的な役割」を担ったと認めたうえで、イランに「すべての暴力行為の自制」を求めた。EUは米国と同様に同司令官をテロリストとみなしてきたが、核合意を守るため、イランとは正面からの対立を避けたいのが本音だ。EUは10日の緊急外相理事会で、イラン危機への一致した対応を探る。