ナタリー・ポートマンの「若見え」称賛の裏側:メンタルヘルス専門家が警鐘を鳴らす理由

映画『ブラック・スワン』などで国際的に著名な俳優ナタリー・ポートマンさんが、2025年7月28日にニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで行われたコンサートにサプライズ登場し、会場を大いに沸かせました。このステージでの映像が公開されると、ポートマンさんの外見に対する「若く見える」といった賛辞が多数寄せられましたが、メンタルヘルスの専門家からは、こうした“褒め言葉”が潜在的にネガティブな影響を及ぼす可能性について指摘が上がっています。

ステージへのサプライズ登場と「若見え」コメントの反響

ナタリー・ポートマンさんは、レナ・ダナム監督の新作映画『Good Sex』で共演しているシンガーソングライター、ロールモデル(本名タッカー・ピルズベリー)さんのコンサートに登場しました。彼女はロールモデルさんの楽曲「Sally, When the Wine Runs Out(サリー、ワインがなくなる時)」に合わせて軽やかに踊り、その姿はビルボードやローリング・ストーンの公式インスタグラムアカウントにも投稿され、瞬く間に「楽しそう」「魅力的」といった好意的なコメントで溢れました。

特に目立ったのは、ポートマンさんの外見に関する「若く見える」という意見です。あるユーザーは、現在44歳のポートマンさんがわずか6年で50歳になることに触れ、「本当に優れた遺伝子を持っている」と驚きを表明しました。他にも「全然歳を取らない」「20歳に見える」「年齢のわりにすごくきれいだ」「魔法を使っているのでは」といったコメントが相次ぎました。一方で、「私も44歳だけど、私たち死んでないよ笑。ナタリーが飛び跳ねても全然おかしくない」と、年齢と活動的な姿を結びつけることへの疑問を呈するコメントも投稿されています。

一般的に「若く見える」と言われることは、多くの人にとって嬉しい褒め言葉と受け取られがちです。しかし、メンタルヘルスの専門家の中には、たとえ善意からの発言であったとしても、こうした言葉がすべての人に心地よく受け入れられるとは限らない上、「年齢を重ねること=悪いこと」という根深いメッセージを社会に広める可能性があると警鐘を鳴らしています。

映画『Good Sex』のセットで撮影されたナタリー・ポートマンさん(2025年7月15日)。リラックスした表情で、自然体の魅力を放つナタリー・ポートマンの姿は、女優としての多面的なキャリアを象徴している。映画『Good Sex』のセットで撮影されたナタリー・ポートマンさん(2025年7月15日)。リラックスした表情で、自然体の魅力を放つナタリー・ポートマンの姿は、女優としての多面的なキャリアを象徴している。

「年齢を重ねることは良くない」という考えを助長する可能性

自己肯定感や不安障害などを専門とする認定メンタルヘルスカウンセラーのハリー・クリツァスさんは、ナタリー・ポートマンさんに対する「44歳には見えない」というコメントについて、「一見すると褒め言葉に聞こえるかもしれません。しかし、その裏には、年相応に見えることや、年齢を重ねること自体がネガティブであるというメッセージが込められている場合があります」と指摘します。ハフポストUS版の取材に対し、クリツァスさんは「たとえ悪気がなかったとしても、こうしたコメントは『若い方が優れている』という価値観を強化し、年齢を重ねるにつれて人の価値が下がると感じさせてしまう可能性があります」と述べ、社会におけるエイジングに対する見方に影響を与える危険性を示唆しました。

結婚と家族療法士のアニータ・クリパラさんは、この問題についてさらに深く掘り下げ、「私たちは、『年相応の外見』がどのようなものであるべきか、わからなくなっているのではないでしょうか?」と問いかけます。彼女は、何十年もの間、雑誌の表紙を飾るモデルの写真が修正され続けてきた歴史に言及しました。現代では、スマートフォンアプリを使えば目の下のクマやシワを簡単に消したり、ワンクリックで数キロ痩せて見せたりすることが可能です。さらに、20代や30代の若年層でさえ、ボトックスなどの美容医療を利用することが珍しくありません。このような状況下で、クリパラさんは「“普通”の44歳の外見とは一体どのようなものなのでしょうか?」と疑問を呈します。

マディソン・スクエア・ガーデンのステージでロールモデルの曲に合わせて踊るナタリー・ポートマンさんの映像。サプライズ登場し、観客を魅了する彼女の躍動感あふれるパフォーマンスが、今回の「若見え」議論のきっかけとなった。マディソン・スクエア・ガーデンのステージでロールモデルの曲に合わせて踊るナタリー・ポートマンさんの映像。サプライズ登場し、観客を魅了する彼女の躍動感あふれるパフォーマンスが、今回の「若見え」議論のきっかけとなった。

クリパラさんはその上で、ナタリー・ポートマンさんに対する「若く見える」というコメントが、「多くの人々に、自然な加齢を受け入れ楽しむのではなく、『若く見えなければならない』という強い社会的プレッシャーを与えてしまう可能性がある」と語りました。この指摘は、見た目に関する社会的期待が、個人の自己認識やメンタルヘルスに与える影響の重要性を浮き彫りにしています。

まとめ

ナタリー・ポートマンさんのサプライズ登場と、それに続く「若く見える」という称賛は、単なる芸能ニュースとしてだけでなく、エイジングに対する社会の意識やメンタルヘルスへの影響という、より深い議論を提起しています。専門家が指摘するように、無意識の褒め言葉が、知らず知らずのうちに「若さこそが価値」というメッセージを助長し、多くの人々に不必要なプレッシャーを与える可能性があります。この出来事は、私たち一人ひとりが、年齢や外見に対する固定観念を見つめ直し、多様な美しさや加齢の自然なプロセスを尊重する社会を目指すきっかけとなるかもしれません。

参考文献

  • ハフポスト日本版 (HuffPost Japan) – 「ナタリー・ポートマンが「若く見える」のは褒め言葉?専門家はメンタルヘルスへの悪影響を指摘」 (参照元記事)