ゴーン被告妻、隠語で謀議 証拠隠滅、中心的役割か



 検察の聴取を終え、報道陣に囲まれるカルロス・ゴーン被告がレバノンで雇った弁護士=9日、ベイルート(共同)

 レバノンに逃亡した日産自動車前会長、カルロス・ゴーン被告(65)=会社法違反(特別背任)罪などで起訴=の妻、キャロル・ナハス容疑者(53)=偽証容疑で逮捕状=が、ゴーン被告が勾留されていた昨年1~2月、レバノンやオマーンなどの事件関係者とスマートフォンのアプリで隠語を使い、口裏合わせなどの証拠隠滅を図っていた疑いがあることが9日、関係者への取材で分かった。ゴーン被告に有利な証言をするよう圧力を依頼する被告のメッセージなども送信していた。

 関係者によると、これらはゴーン被告の指示で、キャロル容疑者の具体的な証拠隠滅行為が明らかになるのは初めて。東京地検特捜部は海外を舞台に幅広く行われたとみられる証拠隠滅工作で、キャロル容疑者が中心的役割を果たしたとみているもようだ。

 ゴーン被告は金融商品取引法違反事件などのほか、日産資金約13億円をサウジアラビアの実業家、ハリド・ジュファリ氏側に不正に支出させたとされる特別背任事件で起訴されている。ゴーン被告はこの約13億円について「現地販売店とのトラブル解決などの業務に対する報酬」と主張しているが、検察側は個人的な投資損失に対する信用保証への見返りとみている。

 関係者によると、キャロル容疑者は昨年2月ごろ、ゴーン被告の知人であるレバノンの弁護士に、ゴーン被告のメッセージとして、「全ては、K・Jが受け取った資金が日産のために行った業務の対価だったということを証明する証言を得られるかにかかっている」「K・Jに、より強い証言をしてもらうため、彼を苦しめる方法を見つけないといけない」と送信していた。

 「K・J」はジュファリ氏を指しているとみられ、ジュファリ氏がゴーン被告の弁解に沿う証言をするため、弱みを握るなどし圧力をかけるよう弁護士に求めたとみられる。

 この弁護士については「MO」というコードネームを使用。キャロル容疑者が、ゴーン被告のメッセージとして、アメリカに住む長男へ送信した内容には、「MO」に接触し、レバノンの捜査当局が日本の検察当局からの捜査協力要請に応じるか探るよう求めていたという。協力要請を受けないよう工作を依頼する狙いがあったとみられる。

 ゴーン被告らは、事件関係者への働きかけが表面化しないよう隠語を使っていたとみられ、特捜部は証拠隠滅を図る明確な意思があったことを示す根拠とみているもようだ。



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