高市早苗氏、初の女性首相指名と「ひとり」が安心して暮らせる社会の課題

2025年10月21日、憲政史上初めて女性の内閣総理大臣に高市早苗氏が指名される瞬間、私は国会議事堂の衆議院本会議場傍聴席にいました。世紀の瞬間に高揚していたわけではなく、物見遊山で訪れたのですが、当日は傍聴人の長い行列ができ、立ち見が出るほどの盛況ぶりでした。指名の瞬間、場内は拍手に包まれましたが、拍手しない議員もおり、私は固い椅子の上で落ち着かず、心は冷めたままでした。この歴史的な出来事は、私のような「ひとり」の存在が社会で直面する根本的な問題に対し、新たな政治がどう向き合うのかという問いを突きつけています。

2025年10月21日、国会議事堂衆議院本会議にて第104代首相に指名され、中央で立つ高市早苗自民党総裁。日本初の女性首相誕生の瞬間2025年10月21日、国会議事堂衆議院本会議にて第104代首相に指名され、中央で立つ高市早苗自民党総裁。日本初の女性首相誕生の瞬間

女性政治家への期待と筆者の背景

私は2023年に、男女同数議会を20年以上維持する神奈川県大磯町を取材した本を出版しました。女性議員を増やすことで、社会が抱える構造的な問題や概念を政治から根本的に正す女性政治家が現れることを期待し、その願いを込めて筆を執ったのです。私自身が「中高年シングル女性」であり、男性稼ぎ主モデルを土台とする日本の社会構造からこぼれ落ち、結婚というセーフティーネットを持たない属性にあります。長年、生活困窮をはじめとするさまざまな困難に直面してきたため、「私のような『ひとり』が安心して暮らせる社会」の実現を政治に強く願っています。

連立政権合意書に見る「労働政策」の欠如

果たして、高市氏の初の女性総理大臣就任が私の願いを叶えてくれるのでしょうか?残念ながら、総理指名の前日にはその期待は難しいと悟っていました。自民党と日本維新の会が発表した「連立政権合意書」には、経済対策は明記されているものの、肝心な労働政策が見当たらなかったからです。これは、多くの「ひとり」が直面する現実、特に中高年シングル女性が抱える問題の根本にある課題への対応が不十分である可能性を示唆しています。

中高年シングル女性が直面する労働問題の根源

中高年シングル女性が抱える問題の根源には、非正規雇用の多さや賃金の安さがあります。日本社会の停滞も、この30年間ほとんど上がらない賃金にその要因があるのではないでしょうか。現在の中高年シングル女性の「中年」層は、まさに就職氷河期世代に該当します。初職から非正規雇用で働き始め、リスキリングを試みても正規職に就けず、昇給も昇進もないまま、「能力を生かす」どころか「能力を期待されない」状況で20代から40代、そして50代を生きてきた人が多数を占めます。私が女性の政治家に最も期待するのは、このような構造的な労働環境を根本から変えることですが、現時点ではその気配は全く感じられません。

結論

高市早苗氏の女性初総理大臣という歴史的任命は、日本の政治における新たな一歩である一方で、私のような「ひとり」が抱える社会構造や労働環境に関する根深い問題への具体的な解決策は、未だ見えてこないのが現状です。政治には、経済対策だけでなく、非正規雇用問題や賃金格差といった労働政策に深く切り込み、誰もが安心して暮らせる社会を築くための根本的な改革が求められています。

参考資料