台湾の総統選で「中国」要因は、初の直接選挙から一度の例外もなく存在し、民進党は毎回、争点としてきた。だが、今回の香港での反送中(中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案の撤回を求める運動)により、台湾の民衆は「直接の脅威」を感じた。
加えて、中国の習近平国家主席が「一国二制度」を強調したことで、以前はそれほど印象のなかった同制度が、台湾に直接関係すると感じるようになった。
これにより、民進党が2008、12年の総統選でも取り上げた「中国による併呑」を、台湾の人々は今回、深刻に受け止めた。民進党は「一国二制度の拒否」を格好の宣伝文句とすることができた。
一方、国民党内には中国との関係で、親中派も平和主義者も台湾重視派もいるが、16年に下野した後、両岸(中台)関係についての「新たな論理」の整理をしなかった。
民進党は08年に大敗した後、蔡英文氏の下で勢力を結集させたが、国民党はその努力を怠った。国民党の選挙戦の失敗は、総統候補の韓国瑜氏個人の問題ではなく、党全体の問題だ。(聞き手 田中靖人)