今国会最大の焦点は、憲法改正に向けた具体的な進展がみられるか否かだ。安倍晋三首相の自民党総裁任期は来年9月までで、今国会での議論停滞は任期中の改憲断念に直結しかねない。改憲に後ろ向きな野党に対し、首相は背水の陣で臨むことになる。
「歴史的な使命を果たすため、憲法審査会の場でともに責任を果たしていこう」。首相は20日の施政方針演説で、与野党議員にこう呼びかけた。演説に先立つ自民党両院議員総会では、昨年の参院選で勝利したことに触れ「国民の声は『憲法改正の議論を前に進めよ』ということだったのは明らかだ」と強調した。
首相の意欲とは裏腹に、議論の場となる衆参の憲法審査会はこの2年、機能不全に陥っている。改憲の手続きを定めた国民投票法改正案は立憲民主党など野党の遅滞戦術により採決が見送られ、5国会連続で継続審議となっている。
先の臨時国会の衆院憲法審では自由討議が3回行われたものの、本丸の改憲原案の策定につながる気配はない。今国会でも野党の反対姿勢は変わらず、審査会の運営は難航が予想される。
ただ、自民党側には同じ轍(てつ)を踏めない事情がある。「自らの手で改憲を成し遂げる」と明言する首相の党総裁任期は来年9月末まで。総裁4選の可能性を考慮しなければ、今国会を含めて残り3国会程度で改憲を実現しなければならない。
自民党ベテランは「任期から逆算すれば今国会での国民投票法改正案の成立はもちろん、改憲原案の国会提出までこぎつける必要がある。それでもぎりぎりの日程だ」と語る。衆参両院で3分の2以上の賛成を得て今秋召集の臨時国会で発議し、5~6カ月間程度の周知期間を経て国民投票を行うという青写真だ。
ただ、これを実行しようとすれば野党の激しい抵抗は必至で、国会全体が止まりかねない。国民にも「強行」の印象が付きかねず、肝心の国民投票で否決されるリスクもはらむ。
一方、安倍政権下での改憲を拒む野党に議論をいくら呼びかけても、応じる公算は小さい。改憲を目指すなら乾坤一擲の勝負は避けられず、改憲原案の策定や国民投票法成立について自民党ベテランは「最後は首相の決断次第だ」と語る。
その首相は、施政方針演説をこう締めくくった。
「大きな夢に向かってこの7年間、全力を尽くしてきた。夢を夢のままで終わらせてはならない」(石鍋圭)