【トランプ弾劾】「前大統領補佐官の証言が分かれ目」 明治大・海野素央教授





海野素央明治大教授

 米上院で始まった弾劾裁判の意見陳述で、検察官役の下院民主党議員団のシフ情報特別委員長は「この裁判はフェア(公平)ではない」と繰り返した。公平な裁判に欠かせないはずのトランプ大統領のウクライナ疑惑に関係する文書の提出をホワイトハウスが拒み、このままでは証人尋問もできないという主張だ。

 一方のトランプ氏は世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)で「米国の経済は立ち直った」と訴えた。景気を良くした大統領を弾劾するのか-と反論したわけだ。

 審理の今後の焦点は、疑惑の真相を知りうる立場にあったボルトン前大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の証人尋問が実現するかだ。共和党のマコネル上院院内総務は証人尋問を嫌がっているが、その理由が面白い。「今のままなら無罪評決を出せるが、証人が証言すると何が起きるか分からない」と話し、審理をコントロールできなくなることを恐れている。

 ボルトン氏は退任後にトランプ氏の外交姿勢を批判している。トランプ氏が政敵のバイデン前副大統領を傷つけるために対ウクライナ外交を利用したことを示す証言が飛び出せば、世論が動き、トランプ氏を支持する共和党の上院議員の中に罷免に傾く人が出てくる可能性は否定できない。

 証人尋問が実現しなくても、民主党は11月の大統領選に向けて「トランプ氏は証人なしに無罪になった。公平な裁判は開かれなかった」との攻撃材料を得る。(聞き手 平田雄介)



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