総務省が24日公表した令和元年平均の全国消費者物価指数(平成27年=100、生鮮食品を除く)は、前年比0・6%上昇の101・7だった。伸び率は前年の0・9%を下回り、3年ぶりの前年割れ。携帯電話料金の値下げや、消費税増税に合わせた幼児教育・保育の無償化の影響で鈍化した。日本銀行が掲げる2%の物価上昇目標は実現が一層不透明になっている。
携帯電話大手の値下げを受け、通信料は4・8%減。私立幼稚園の保育料が24・2%減など幼児教育無償化の影響も大きい。ただ、人手不足による人件費や物流費の増加が価格に反映され、外食が1・5%、菓子類が2・0%それぞれ伸びたほか、電気代やガス代も上がった。総務省は「緩やかな上昇が続いている」との見方を示す。
伸び率が前年割れするのは、平成28年(前年比0・3%減)以来。当時は中国の成長鈍化や米国の「シェール革命」による供給過剰で原油価格が急激に下落したほか、英国の欧州連合(EU)離脱決定などで世界経済が揺さぶられた。
足元も米中貿易摩擦に伴う中国経済の減速などで世界経済の不透明感は強い。併せて公表した令和元年12月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比0・7%上昇と前月(0・5%上昇)より伸び率が拡大したが、消費税増税と個人消費の低迷で値上げが難しい状況が続くことなどから「当面は0%台で推移する」(ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査部長)見込みだ。
日銀が24日公表した昨年12月18、19日の金融政策決定会合の議事要旨でも複数の政策委員が消費税増税の悪影響に警戒感を示した。今月21日の決定会合では物価上昇率の見通しを下方修正し3年度でも1・4%にとどまると予想しており、目標の2%は依然遠い。