【ワシントン=黒瀬悦成】ウクライナ疑惑をめぐるトランプ米大統領の上院の弾劾裁判は22日、検察官役の野党・民主党の下院議員団による意見陳述が始まった。主任検事役のシフ情報特別委員長は、「トランプ氏を罷免しなければ、私たちは米国の国際的地位を損ねることになる」と主張し、同氏に有罪評決を下すよう訴えた。
意見陳述は24日までの3日間の日程で、1日8時間ずつ行われる。25日からはトランプ氏の弁護団が日曜を除く3日間にわたり意見陳述を行う予定だ。
シフ氏は「トランプ氏は大統領選を自身に有利に導くため、ウクライナ大統領に対して信憑(しんぴょう)性のない疑惑の捜査に着手したことを発表するよう圧力をかけた」と指摘。こうした行動は「権力の乱用にあたる」とし、疑惑の調査を進めようとした議会の取り組みを妨害したことと合わせ、「トランプ氏の有罪を証明してみせる」と強調した。
これに対し、トランプ弁護団のジェイ・セクロー弁護士は22日、記者団に「トランプ氏の無罪は疑いの余地がない」と断じた。
トランプ氏も滞在先のスイスで裁判は「いんちきだ」と批判。ボルトン前大統領補佐官(国家安全保障問題担当)ら疑惑の核心を知りうる立場にいる証人の尋問を民主党が求めていることに関しては「構わないが、外交上の問題が生じる恐れがある」などとして慎重姿勢を示した。
ロイター通信が22日発表した世論調査では、72%が証人尋問を認めるべきだと回答。共和党側では、ボルトン氏の証人尋問を認める代わりに、一連の疑惑で名前が浮上したバイデン前副大統領の息子を証人として呼ぶべきだとの主張も浮上している。
調査会社ニールセンによると、21日の弾劾裁判のテレビ中継は1100万人が視聴したとされ、昨年11月に下院での弾劾審議が始まった際の1380万人に比べ減少した。