【新聞に喝!】ゴーン被告に隙突かれた司法、メディア インド太平洋問題研究所理事長・簑原俊洋





カルロス・ゴーン被告(右)と妻のキャロル容疑者=14日、レバノンのベイルート(ロイター)

 「働き方改革」は今年も引き続きキーワードの一つとなろう。この年末年始は従来営業していた近所のお店も一部で閉店に踏み切っていた。世界を見渡せば日本人は働き過ぎだと思うのでそれ自体は悪いことではないが、当然ながら全職種に及ぶべきではない。警察、消防、医療や国防に携わる者がこの時期一斉に休めば支障は計り知れないのは一目瞭然だが、その中には新聞も含まれよう。

 確かに元旦に新聞は配達されるものの、その中身は前もって組んである正月特集がほとんどでニュース性は乏しい。多くの記者が休暇に入り、各新聞社は最小限の人数で切り盛りしているのだと想像される。

 そして、この隙を巧みに突いたのが昨年末にレバノンへの逃亡を成し遂げた日産自動車前会長、カルロス・ゴーン被告である。糾弾されるべきはGPS(衛星利用測位システム)装着すら義務付けていなかった日本の法制度、あるいは出国時のセキュリティーチェックの甘さなど多々あるが、年末年始シフトのため初動が大幅に遅れた日本の新聞社も非を免れない。

 当初、事件についての情報はまばらで、まとまった形での記事が出るのに時間を要した。情報化社会において、この対応の遅さには閉口した。筆者の知る欧米の主要新聞であれば、いかなる連休ないし祝日であれ、報道の厚みにさして大きな変化はない。

 他方、その欧米メディアで最初、ゴーン被告の逃亡に同情的な報道が目立ったことには首をかしげた。米紙ニューヨーク・タイムズと英誌エコノミストは日本の刑事裁判の有罪率99%は異常であり、西洋と比べ後進的な法体系だとの論調で報じていた。法の支配は存在しても、その質が低いゆえに逃亡する気持ちは分からなくもないという報道姿勢は極めて傲慢であり、いかに表面的な理解しかしていないかを如実に示す。普通に考えれば、財力にものを言わせて法による正当な裁きから逃避した人物を擁護するのは実に滑稽であり、日本の司法制度を蹂躙(じゅうりん)する行為に等しい。

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