大手通信会社「ソフトバンク」の機密情報が同社元社員によって不正に持ち出され、ロシア側に渡ったとみられる事件で、在日ロシア通商代表部の職員らが身分を隠して元社員の荒木豊容疑者(48)=不正競争防止法違反容疑で逮捕=に接触し始めたとみられることが26日、捜査関係者への取材で分かった。警視庁公安部はスパイ活動で情報を獲得するため、荒木容疑者の警戒心を解く狙いがあったとみて経緯を調べる。
捜査関係者によると、スパイ活動に関わったとみられるのは、外交特権を持つ50代の幹部職員の男と、平成29年にロシアに帰国した元職員の男。元職員が数年前、荒木容疑者がソフトバンク社員であることなど素性を把握、ターゲットとして選定したとみられる。
荒木容疑者の供述などから、街中で偶然出会ったように装って接触した可能性が判明。東京都内の飲食店などでの接待や、複数回にわたる現金の提供は幹部職員が主に担い、荒木容疑者をそそのかして同社の機密情報の提供を受けたとみられる。
荒木容疑者は調べに対し、昨年2月に不正取得した同社の機密情報を幹部職員に渡したことを大筋で認める一方、「在日ロシア通商代表部の職員とは知らなかったが、情報を要求され、ロシアのスパイかもしれないと思った」などと供述している。公安部は昨年12月にソフトバンク本社を家宅捜索、情報漏洩(ろうえい)の実態解明を進めている。