【ロンドン=板東和正】欧州連合(EU)離脱を迎えた英国では、離脱を求めていた市民数百人がロンドン中心部の議会前広場周辺に集まり、離脱の瞬間、一斉に歓喜の声を上げた。一方で、EUとの貿易交渉の行方が懸念される中、残留を望んでいた市民は「英国は大きな過ちを犯した」とうなだれた。
英首相官邸では1月31日午後11時直前から外壁に時計が投影され、離脱へのカウントダウンが行われ、離脱の瞬間、鐘の音が鳴り響いた。議会前広場周辺ではその瞬間、離脱派市民が赤、青、白のユニオンジャック(英国旗)をはためかせ、「歴史的瞬間が来た!」と声をあげた。
この日は離脱派の市民が昼ごろから議会前広場周辺に集結。ユニオンジャックの衣装を身にまとった市民の姿もみられ、「(2016年の国民投票から)約3年半も待った。もう喜びを抑えられない」と目に涙を浮かべた。
広場周辺では、EUの旗を掲げる残留派の市民の姿もあった。ロンドン在住の女性(35)は「離脱派が喜びに酔いしれられるのは今だけ。すぐに多くの問題があることを知るだろう」と突き放した。
残留派市民が最も恐れているのが、経済に混乱を与える「合意なき離脱」のリスクが残っていることだ。
ジョンソン政権は、1月に成立した離脱関連法で、英EUが現状の経済関係を続ける「移行期間」の終了を12月末に設定した。このため、EUとの貿易交渉を残る11カ月間でまとめられなければ、英国とEU間の貿易には世界貿易機関(WTO)の規則に従った関税が適用される。
ジョンソン首相は31日、国民に向けビデオ・メッセージで「離脱の機会を素晴らしい成功に変えられる」と発言した。だが、先の残留派の女性は「1年たって失敗だったと振り返る」と言い放った。