11月の米大統領選で野党・民主党候補者指名争いが3日のアイオワ州党員集会で始まった。
7月の党大会までにトランプ大統領に「勝てる候補」が勝ち残るか、米国の有権者とともに注視したい。トランプ氏の再選阻止を旗印に掲げるのであれば、「米国第一主義」に対抗するビジョンを示すべきだ。
初戦はトラブルで集計作業が遅れたが、大学無償化や国民皆保険導入を訴える最左派のサンダース上院議員の優勢が伝えられた。
富裕層や既得権者を標的に、格差拡大に憤る若年層を熱狂させる同氏の言動には「社会主義者」の評判がある。アイオワ州に続き11日のニューハンプシャー州予備選で連勝すれば、情勢は同氏の有利に傾く。
だが、「米国第一主義」のトランプ氏と過激な変革を訴えるサンダース氏という両極端の対決となれば、米国社会の分断が一段と進む可能性がある。
民主党候補が支持者を第一に政敵をののしり、エリート層を攻撃するポピュリズム(大衆迎合主義)に傾けば、トランプ氏と大差ない。その結果、米国がより内向きとなること自体、世界最大のリスクとの指摘もある。
有力な穏健派でオバマ政権で副大統領を務めたバイデン氏は出遅れた。経験と即戦力を訴えているが、「世界の警察官ではない」と宣言したオバマ氏との差別化を図ることが求められる。
ブルームバーグ前ニューヨーク市長の存在も無視できない。
巨額の資産を武器に大規模州の予備選などが集中する3月のスーパーチューズデーへの参入をもくろむが、左傾化する党の中核支持層をどうつかむかが課題だ。
一方のトランプ氏は、ウクライナ疑惑をめぐる上院弾劾裁判が無罪評決となる見込みで、4日の一般教書演説が2期目をにらむ事実上の公約となる。
その中身は「米国第一」の姿勢がより鮮明となり、同盟国に米軍駐留経費の負担増を迫る一方で、「力による平和」を追求しイランなどには威圧的な外交姿勢を誇示するものとなるだろう。
世界の秩序は中露の権威主義国家の挑戦によって危機にあり、米国の不在を許さない。だからこそ大統領選では、自由と民主主義という価値観の守護者としての覚悟を論じ合ってほしい。