欧州連合(EU)から1月末に離脱した英国のラーブ外相は、離脱後初の外遊先としてオーストラリアや日本などを選んだ。EU離脱に伴い各国との経済協定の再構築が迫られる中、インド太平洋地域を重視していく姿勢を示した形で、同地域との貿易・投資促進によって離脱後の英国経済の維持・拡大を図る戦略だ。
「欧州との貿易は重要だが、本当のチャンスは世界の成長地域ある。インド太平洋地域は一番の成長地域といえるだろう」
日本を訪れたラーブ氏は8日、日英経済連携協定(EPA)交渉の早期開始で合意した茂木敏充外相らとの会談後、記者団にこう述べ、同地域を重視する考えを強調した。
ラーブ氏は今回の外遊でオーストラリア、日本、シンガポール、マレーシアの計4カ国を訪問。いずれも環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の参加国だ。ラーブ氏は「われわれはTPPの参加を望んでいる」と語り、TPP交渉のまとめ役を担った日本から、参加に向けた支援の表明が得られたことを喜んだ。
2国間の経済協定に加えて、面的な市場を得られるTPPに参加することにより、インド太平洋地域の旺盛な需要や投資マネーの取り込みを図りたい考えだ。
ラーブ氏は同時にTPP参加の意義について経済的な利益だけでなく、「自由で開かれたインド太平洋地域」の構築に向けた「政治的なコミットメント」になると指摘する。
EUから離れた英国は国際社会における影響力の低下が懸念される。民主主義や法の支配といった普遍的価値を共有する日本やオーストラリアなどとインド太平洋地域の秩序構築に参加することで、存在感の維持・向上につなげたい考えとみられる。(坂本一之)